ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目日米AI・半導体関連株の大幅調整と3つの懸念材料

2026年6月11日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】日米AI・半導体関連株の大幅調整と3つの懸念材料

●日米AI・半導体関連株の大幅な調整は、大型IPOに伴う需給悪化など3つの懸念材料が主因。
●IPO前の換金売りは一時的、中東情勢も弊社の原油想定不変なら、株式市場の堅調さは継続。
●米国は連続利上げ局面入りとはならず、日米AI・半導体関連株の下げは健全な調整の範囲内。

日米AI・半導体関連株の大幅な調整は、大型IPOに伴う需給悪化など3つの懸念材料が主因

6月に入り、日米の株式市場では人工知能(AI)・半導体関連株の大幅な調整が目立っています。足元で主な懸念材料として指摘されているのが、①米国での大型新規株式公開(IPO)を前にした換金売りによる需給の悪化、②米国とイランの攻撃応酬による中東情勢の悪化、③5月の米雇用統計に起因する米利上げ観測の強まりの3点です。今回のレポートでは、それぞれについて考え方を整理します。


まず、①の需給悪化懸念については、米スペースXが6月12日にナスダック市場に新規上場し、750億ドル(約12兆円、1ドル=160円で換算、以下同じ)を調達するとの報道が背景にあると思われます。日本での募集額は最大25億ドル(約4,000億円)になるとも報じられており、IPO応募のための投資家による保有株式の売却が、足元の株価調整の一因になっているとの指摘もみられます。

IPO前の換金売りは一時的、中東情勢も弊社の原油想定不変なら、株式市場の堅調さは継続

一般に、大型のIPOを前に、実際に換金売りが行われたとしても、それはIPOまでの動きであり、あくまで一時的な需給悪化要因にすぎません。また、株式投資などの待機資金とされるMMF(マネー・マーケット・ファンド)は、直近で運用残高が7.9兆ドル(約1,264兆円)に達しており(図表1)、ここからもスペースXのIPO応募に向かう分は相応にあると推測され、換金売りを過度に懸念する必要はないと考えます。


次に、②の中東情勢の悪化については、この先、米・イランの攻撃応酬が続いても、部分的、限定的であれば、原油価格の急騰や株式市場の急落という事態は避けられる可能性が高いと思われます。弊社は、北海ブレント先物価格が当面1バレル=100ドル強で推移し、80ドル台に低下するのは来年以降と想定しており(図表2)、これが変わらない限り、日米株式市場の堅調地合いは維持されるとみています。

米国は連続利上げ局面入りとはならず、日米AI・半導体関連株の下げは健全な調整の範囲内

最後に、③米利上げ観測の強まりについては、米国が本格的な利上げ局面入りした場合は注意が必要ですが、弊社は予防的な利上げが年内9月と12月に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ずつ行われるのみと考えており、本格的な利上げ局面入りまでは想定していません。6月16日、17日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)は注目されますが、今回は中立的な姿勢が示され、過度にタカ派的な内容にはならないと予想しています。


以上より、足元のAI・半導体関連株の下げは、過熱感を和らげる健全な調整の範囲内と考えることもできます。なお、米国の大型IPOは、スペースXの後、オープンAI、アンソロピックが続く見通しで、上場時の時価総額はスペースXが1.8兆ドル、オープンAIとアンソロピックは各1兆ドルに達する模様です。上場後のこれらの株価が市場全体に与える影響は相応に大きくなることが予想され、業績の見極めが一層重要になると考えます。


※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。