ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目米国とイランの暫定合意に関する報道と市場の受け止めについて

2026年5月29日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】米国とイランの暫定合意に関する報道と市場の受け止めについて

●米アクシオスは28日、米・イランが停戦を60日間延長し、核問題の交渉を行うことで合意と報じた。
●米金融市場は主要株価指数の上昇、国債利回りの低下で反応、日本市場でもこの流れが続く。
●最終合意の見極めは必要だが市場の関心はむしろ合意後のホルムズ海峡と原油相場の動向か。

米アクシオスは28日、米・イランが停戦を60日間延長し、核問題の交渉を行うことで合意と報じた

米ニュースサイトのアクシオスは5月28日、米政府当局者の話として、米国とイランは停戦を60日間延長し、この間にイランの核開発プログラムを巡る交渉を行うことで合意したと報じました。両国が合意内容に署名すれば、2月の戦闘開始以降、最も重要な外交的進展となりますが、トランプ米大統領はまだ最終的に承認しておらず、イラン側も受け入れを確認していないとのことで、現時点では暫定的な合意という状況です。


暫定合意の内容には、ホルムズ海峡を通過する船舶の航行は無制限であること、イランは30日以内に全ての機雷を除去すること、米国は段階的に海上封鎖を解除すること、イランは核兵器の開発を追求しないことなどが盛り込まれる模様です(図表1)。また、60日間の核問題の交渉では、イランの高濃縮ウランの処分方法などを話し合い、米国がイランに科している経済制裁の緩和や凍結資産の解除も議論するとのことです。

米金融市場は主要株価指数の上昇、国債利回りの低下で反応、日本市場でもこの流れが続く

アクシオスの報道を受け、5月28日の米国市場では、ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数が、前日に続きそろって過去最高値を更新しました。前日比の上昇率は順に0.05%、0.58%、0.91%と、大手ハイテク株の上昇でS&P500指数とナスダック総合は底堅く推移しましたが、ダウ平均はキャタピラーなど主力株の一角に利益確定売りが出て、下落する場面もみられました。


WTI原油先物価格は、ホルムズ海峡の正常化期待から、報道直後に下落で反応し、米10年国債利回りも、インフレ緩和の見方が広がり、低下の動きがみられました。また、外国為替市場では、リスク回避的な米ドル選好の巻き戻しが進み、米ドルは対主要通貨で下落しました。なお、5月29日の朝方の日本市場でも、米国市場の流れを受け継ぎ、日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)は上昇、10年国債利回りは低下しています。

最終合意の見極めは必要だが市場の関心はむしろ合意後のホルムズ海峡と原油相場の動向か

なお、前述の通り、イラン側は合意内容の受け入れを正式に確認しておらず、また、トランプ氏も直近で、イランとの合意を急いでいないと述べていることから、正式な合意にはもう少し時間を要することも想定されます。ただ、市場で最終合意の織り込みは相応に進んでいるとみられ、むしろ焦点は合意後のホルムズ海峡の正常化スケジュールや原油価格の低下度合いに移っているように思われます。


なお、弊社はマクロ経済の見通しを策定するにあたり、原油価格の想定は北海ブレント先物価格(図表2)が当面1バレル=100ドル強で推移し、80ドル台に低下するのは2027年以降としています。米国とイランの最終合意は慎重に見極める必要があるものの、先行きの原油価格が弊社の想定よりも落ち着いた推移となれば、米国や日本などの経済成長率やインフレ率の見通しに改善余地が広がり、株式市場にも追い風になると考えています。