ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目イラン攻撃から2週間が経過し世界の金融市場はどう動いたか

2026年3月16日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】イラン攻撃から2週間が経過し世界の金融市場はどう動いたか

●イラン攻撃から2週間、商品市場では原油先物価格が大きく上昇した一方、金先物価格は下落。
●リスクオフの動きが強まり主要株価指数は下落、インフレへの懸念で日米欧の国債利回りは上昇。
●産油国が関係する地政学リスク発生時、市場は原油高、株安、債券安、米ドル高に振れやすい。

イラン攻撃から2週間、商品市場では原油先物価格が大きく上昇した一方、金先物価格は下落

2月28日に米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始してから3月14日で2週間が経過しました。空爆を受けるイランは徹底抗戦の構えを示し、イスラエルや湾岸諸国への攻撃を続けるなど、現時点で収束の気配はみられず、金融市場では紛争長期化への警戒が強まっています。そこで、今回のレポートでは、イラン攻撃から2週間で世界の金融市場はどう動いたか、検証していきます。


まず、商品市場では、原油価格が大きく上昇し、WTI原油先物価格は2月27日から3月13日までの期間(以下、騰落率はこの期間で算出)、47.3%上昇しました(図表)。ホルムズ海峡の実質的な封鎖による供給懸念が主因と思われます。一方、ニューヨークの金先物価格は3.5%下落しました。後述する株安や金利上昇、ドル高の動きを受け、株式の損失補填の売りや、投資妙味の低下(金利がつかず取引はドル建て)を指摘する声も聞かれました。

リスクオフの動きが強まり主要株価指数は下落、インフレへの懸念で日米欧の国債利回りは上昇

次に、株式市場では、イラン情勢の悪化を受けリスクオフ(回避)の動きが強まり、世界の主要株価指数の多くが下落しました。原油価格の上昇を受け、原油の輸入依存度が高い日本やアジア諸国などの株価指数は、相対的に大きく下げている様子がうかがえます。ただ、世界最大の産油国である米国の主要株価指数も、相対的な下落率は小さいものの、売りに押されています。


国債市場では、原油高によるインフレ圧力の強まりが意識され、日米欧で利回り上昇の動きがみられます。米国ではフェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む年内25bpの利下げ回数は、2月27日時点の2.5回から3月13日時点で0.9回に低下し、利下げ観測が後退しました。なお、利回りの上昇幅は、日本と欧州でかなり差がありますが、欧州の中央銀行は日銀よりも機動的に行動するとの見方もあり、この点が影響したとも考えられます。

産油国が関係する地政学リスク発生時、市場は原油高、株安、債券安、米ドル高に振れやすい

為替市場に目を向けると、米ドルは主要33通貨のうち、31通貨に対して上昇し、ほぼ全面高の展開となりました。「有事のドル買い」といわれる通り、基軸通貨であり、流動性の高い米ドルは、イラン情勢の悪化に伴う退避マネーの受け皿となりました。一方、同じく流動性の高い日本円も、かつては「有事の円買い」といわれましたが、原油高で貿易赤字が拡大するとの見方から、主要33通貨のうち、18通貨に対する上昇にとどまりました。


以上、イラン攻撃から2週間が経過した世界の金融市場の動きを振り返りましたが、「産油国が関係する地政学リスク」が発生した場合は、「原油高、株安、債券安、米ドル高」に振れやすいことが確認されました。つまり、産油国が関係する地政学リスクは、原油供給の不透明感が強まりやすく、市場の景気悪化懸念(金利低下方向の動き)よりも、まずインフレ懸念(金利上昇方向の動き)を高めると考えられます。