ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目株・国債・円が売られる「トリプル安」の動きについて

2025年11月20日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】株・国債・円が売られる「トリプル安」の動きについて

●日経平均の下落は米AI関連銘柄の調整の影響が大きいが今朝のエヌビディア好決算で反発へ。
●国債売りが財政悪化懸念であるなら、利回り急騰回避には財政安定の青写真を示すことが必要。
●円安は財政悪化懸念と為替介入を巡る思惑、一段の円安進行なら財務省高官発言に要注目。

日経平均の下落は米AI関連銘柄の調整の影響が大きいが今朝のエヌビディア好決算で反発へ

足元の日本市場では、株、国債、円がそろって売られる「トリプル安」の動きがみられます(図表1、2)。以下、この背景と今後の注目点について考えます。まず、株について、日経平均株価は終値ベースで過去最高値をつけた10月31日から11月19日までの期間、3,873円64銭(7.4%)下落しましたが、特に目立って下げを主導したのは、ソフトバンクグループ、アドバンテスト、東京エレクトロンの値がさ株3銘柄です。


これら3銘柄の下げは、米人工知能(AI)関連銘柄の調整の流れを受けたものと思われ、値がさ株の動きに左右されやすい日経平均の下げ幅を拡大したと考えられます。参考までに、同期間の東証株価指数(TOPIX)の下落率は2.6%にとどまっています。なお、日本時間の本日早朝に発表された、米エヌビディアの8-10月期決算は、市場予想を上回る良好な内容となり、米AI関連銘柄や日本株は反発が見込まれます。

国債売りが財政悪化懸念であるなら、利回り急騰回避には財政安定の青写真を示すことが必要

次に、日本国債について、このところ長期国債や、超長期国債の利回りが大きく上昇(国債の価格は下落)しています。市場では、高市早苗首相が掲げる積極財政を巡り、国債増発による財政悪化懸念から、国債の売り圧力が強まっているとの声が聞かれます。政府は経済対策の規模を17兆円台の方向で調整していると報じられていましたが、自民党の有志議員らは11月18日、高市首相に2025年度の補正予算を25兆円規模にするよう求めました。


結局、経済対策は物価高対策を含め20兆円規模で11月21日に閣議決定される見通しとなっています。高市首相は11月17日に、「責任ある積極財政はあくまでマーケットの信認が大事だ」と発言しました。マーケットの信認を得るには、まずは財政支出で経済を支えた後、どのような形で財政を安定させるかについて明確な青写真を示すことが必要と思われ、それが示されれば、国債利回りの大幅な上昇は回避されると考えます。

円安は財政悪化懸念と為替介入を巡る思惑、一段の円安進行なら財務省高官発言に要注目

そして、円については、対主要通貨での減価が顕著となっており、ドル円は11月19日に一時1ドル=157円18銭水準までドル高・円安が進みました。高市政権の積極財政が財政悪化につながるとの懸念に加え、19日に行われた片山さつき財務相、城内実経済財政相、日銀の植田和男総裁の3者会談で、「為替について具体的な話は出なかった」と片山財務相が発言し、為替介入に対する警戒感が後退したことが円売りにつながっている模様です。


目先は、政府・日銀によるドル売り・円買いの為替介入が発動される水準を試すような、投機的なドル買い・円売りの動きには注意が必要と思われます。ここからは改めて財務省高官発言が注目され、「あらゆるオプションを排除しない」、「断固たる措置をとる」などのコメントは、介入実施の可能性の高まりを示唆し、「常に準備ができている」などのコメントは、介入実施が近いことを示唆すると解釈されます。


※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。