2025年9月9日
三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩
【市川レポート】自民党総裁選挙と首相指名選挙と国会運営のチェックポイント
●総裁選はフルスペックの見通し、国会議員票と党員・党友票は同数も決選投票は前者の比重大。
●総裁選候補の政策方針に注目、首相指名選挙で政権交代や野党党首擁立の可能性は低い。
●少数与党継続なら財政はやや拡張的も消費減税は慎重か、物価高で日銀利上げ方針は維持。
総裁選はフルスペックの見通し、国会議員票と党員・党友票は同数も決選投票は前者の比重大
今回のレポートでは、自民党総裁選挙と首相指名選挙、そして国会運営に関するチェックポイントをまとめます。まず、総裁選について、今回は国会議員票と党員・党友票による「フルスペック方式」で10月4日に投開票を行う案が有力と報じられています。茂木敏充前幹事長は9月8日、総裁選に立候補する意向を表明したほか、林芳正官房長官も出馬する意向を固め、小林鷹之元経済安全保障相も立候補を検討している模様です。
また、高市早苗前経済安全保障相も出馬の準備を進めているとの報道もあり、小泉進次郎農林水産相の動きも注目されています。総裁選がフルスペック方式となれば、党員・党友票は国会議員票と同じ票数(今回は295票)が配分され、知名度の高い候補が有利といわれます。なお、得票数が過半数未達の場合、上位2名での決選投票となりますが、決選投票は国会議員票295票と都道府県連票47票で争われ、国会議員票の比重が大きくなります。
総裁選候補の政策方針に注目、首相指名選挙で政権交代や野党党首擁立の可能性は低い
ここまで名前をあげた5名は、昨年の総裁選にも立候補しており、その時の主な主張は図表の通りです。現在、物価高が続くなか、日銀は利上げ局面にあり、米関税政策は日米合意で不透明感が後退しています。また、消費税減税について、自民党は7月の参議院選挙で公約とせず、麻生太郎最高顧問は9月3日、消費税減税に否定的な考えを示しました。総裁選候補者はこれらの状況を踏まえ、今後、政策方針を公表するとみられます。
次に、首相指名選挙は、衆参両院で投票の過半数を争い、得票数が過半数未達の場合、上位2名で決選投票が行われます。決選投票では、得票の多い候補が勝利となります(前述の総裁選も同じ)。なお、少数与党のため、自民党総裁が首相に選出される保証はありません。野党が統一候補を立てるケース(その場合は政権交代)や、与党が連立を拡大し、野党党首を候補者とするケースも考えられますが、現時点で可能性は低いように思われます。
少数与党継続なら財政はやや拡張的も消費減税は慎重か、物価高で日銀利上げ方針は維持
最後に、国会運営について、仮に自民党の新総裁が首相に選出され、かつ、少数与党が続いた場合、予算も法律も野党の一部から賛成を得られなければ、成立しないことになります。与党には、政権を維持し、極力安定的に国会を運営したい意向があると思われるため、野党とどのように連携していくのか、具体的には、野党に対し政策ごとに閣外協力を求めるのか、あるいは野党を引き込んで連立を拡大するかが焦点となります。
このように、国会運営にあたっては、野党の協力が必要となることから、財政政策は野党の意向を踏まえ、いくらか拡張的になることが予想されますが、消費税減税に対する与党の慎重姿勢は変わらない公算が大きいと考えます。また、国内の物価高を踏まえると、日銀への緩和期待は高まりにくい状況にあると判断され、日銀の利上げ方針は維持されるとみています。