2025年8月18日
三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩
【市川レポート】次期FRB議長候補11人の顔ぶれ
●トランプ氏が次期FRB議長を早期に指名する考えを示すなか11人の候補者の名前が報じられる。
●次期議長の選定はベッセント氏が主導、候補者と面接し最終候補者リストをトランプ氏に提出へ。
●10月か11月に指名ならば過去に比べて異例の早さに、次期議長の人事動向は引き続き要注視。
トランプ氏が次期FRB議長を早期に指名する考えを示すなか11人の候補者の名前が報じられる
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、2026年5月に議長としての任期を満了します。トランプ米大統領は、これまでパウエル議長に利下げを求める発言を繰り返しており、8月13日には、次期FRB議長候補を3、4人に絞り込み、少々早めに指名する考えを示しました。候補者として、米国家経済会議(NEC)のハセット委員長やウォラーFRB理事、ウォーシュ元FRB理事の名前は、早い段階から報じられていました。
このほか、経済学者のサマーリン氏とブラード前セントルイス連銀総裁も候補者にあがっており、8月11日には、FRBのボウマン金融監督担当副議長とジェファーソン副議長、ダラス連銀のローガン総裁の名前も報じられました。さらに、8月13日の報道では、新たに米投資銀行ジェフリーズのゼルボス氏、リンゼー元FRB理事、米運用会社ブラックロックのリーダー氏も候補に入ったと伝えられ、候補者は11人に達した模様です。
次期議長の選定はベッセント氏が主導、候補者と面接し最終候補者リストをトランプ氏に提出へ
11人の顔ぶれは図表の通りですが、報道によると、ベッセント米財務長官が次期FRB議長の選定を主導し、より多くの候補者と面接した上で、最終候補者リストをトランプ氏に提出するとみられます。なお、ベッセント氏は日本経済新聞のインタビュー(8月7日)において、次期FRB議長に求める資質と、FRBの独立性について、自身の考えを明らかにしています。
ベッセント氏は、①市場の信認を得られる人物、②複雑な経済データを分析できる人物、③米連邦公開市場委員会(FOMC)のコンセンサスを得られる管理能力を持つ人物、④鋭敏に先行きを予測できる人物、を次期議長の条件にあげました。また、トランプ氏も(民主党左派の)ウォーレン上院議員も、金融政策に対して自分の意見を表明しているが、最終的にFRBの独立性は維持されていると述べました。
10月か11月に指名ならば過去に比べて異例の早さに、次期議長の人事動向は引き続き要注視
ベッセント氏は6月に、トランプ氏がFRB議長の後任を10月か11月に指名する可能性があるとの見方を示していました。なお、第1次トランプ政権において、パウエル氏は2017年11月に議長に指名され、議長続投はバイデン前大統領が2021年11月に決めました。いずれも翌年2月が任期切れであったため、同じタイミングなら次期議長の指名は2026年に入ってからでもおかしくはなく、10月や11月の早期指名は異例といえます。
議長は理事から選ばれるため、ウォラーFRB理事、ボウマン金融監督担当副議長、ジェファーソン副議長の中から指名する場合は昇格という形になり、それ以外の候補者の場合は、いったん理事を経てからとなります(8月8日に辞任したクグラー理事の後任は米大統領経済諮問委員会(CEA)のミラン委員長が2026年1月31日まで務める予定)。次期FRB議長の人事は市場の関心も非常に高く、引き続き動向を注視する必要があると思われます。