2025年6月25日
三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩
【市川レポート】中東情勢が緊迫化した際の日本株の動きを振り返る
●中東情勢緊迫化で原油急騰、欧米市場で株安、長期金利上昇、為替はドル高、円安が進行。
●日経平均は一部半導体関連の値がさ株が大きく買われ上昇、業種別はその他製品などが上昇。
●中小型、バリュー、内需も相対的に選好、これらの動きは中東情勢の再度悪化時に参考になろう。
中東情勢緊迫化で原油急騰、欧米市場で株安、長期金利上昇、為替はドル高、円安が進行
イスラエルは6月13日にイランの核施設などを空爆、イランも報復として弾道ミサイルでイスラエルを攻撃し、中東情勢は一気に緊迫化しました。その後、23日には米軍がイランの核施設を空爆し、イランは翌24日にカタールの米軍基地を報復攻撃しましたが、トランプ米大統領は同日、イスラエルとイランが「完全かつ全面的な停戦で合意した」とSNSに投稿しました。
イスラエルとイランは6月24日、ともに停戦を受け入れる姿勢を示し、攻撃の応酬は沈静化しました。中東情勢が緊迫化した期間(6月12日から20日まで)の金融市場の動きをみると、原油価格が急騰するなか、欧米市場では主要株価指数が下落、10年国債利回りは上昇(価格は下落)しました(図表1)。為替市場では、対主要通貨での米ドルの増価と日本円の減価が顕著となり、ドル円はドル高・円安に振れました。
日経平均は一部半導体関連の値がさ株が大きく買われ上昇、業種別はその他製品などが上昇
国内の株式市場では、東証株価指数(TOPIX)は下落したものの、日経平均株価は上昇しました。日経平均の上昇幅は230円14銭となり、プラスの寄与度の大きい上位銘柄はアドバンテストやソフトバンクグループなどで、アドバンテストのプラスの寄与額は406円60銭でした(図表2)。マイナスの寄与度の大きい銘柄は、東京エレクトロンやファーストリテイリングなどで、東京エレクトロンのマイナスの寄与額は101円28銭でした。
このように、半導体関連銘柄が全て買われた訳ではありませんが、改めて日経平均は値がさ株の動きに強く影響を受ける様子がうかがえます。なお、東証33業種指数の動きをみると、上昇率の上位は、任天堂やバンダイナムコホールディングスなどを含む「その他製品」や、「電気・ガス業」、「鉱業」で、下落率の上位は「医薬品」、「鉄鋼」、「空運業」となっています。
中小型、バリュー、内需も相対的に選好、これらの動きは中東情勢の再度悪化時に参考になろう
スタイル別指数については、大型株(TOPIX100指数)よりも中・小型株(TOPIX MID 400指数、TOPIX SMALL指数)が選好され、バリュー株(TOPIXバリュー指数)のパフォーマンスは相対的にグロース株(TOPIXグロース指数)を上回りました。また、日経平均内需株50指数は上昇したものの、日経平均外需株は下落するなど、中東情勢緊迫化のなかで、それぞれ異なる動きが確認されました。
その後、前述の停戦合意が報じられると、6月20日から24日までの期間、原油価格は反落、欧米株は反発、米ドルは対主要通貨で売り優勢となりました。国内市場でも、売られていた銘柄や業種別指数、スタイル別指数に、一部買い戻しの傾向がみられました。今後、中東情勢が再び悪化する場面では、今回のようなドル円の動きや、景気変動の影響を受けにくい内需・ディフェンシブ、小型株の値動きが、ある程度、参考になると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。