ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目2025年6月FOMCプレビュー~今回の注目点を整理する

2025年6月16日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】2025年6月FOMCプレビュー~今回の注目点を整理する

●政策金利は4会合連続で据え置きを予想、FOMC声明も、基本的なリスク判断は変わらずとみる。
●2025年のGDP予想は下方修正、物価予想は上方修正、ドットチャートの利下げ回数は不変か。
●パウエル議長は利下げを急がずFOMCは無風通過か、弊社は10月と12月の利下げ予想を維持。

政策金利は4会合連続で据え置きを予想、FOMC声明も、基本的なリスク判断は変わらずとみる

米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月17日、18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催します。今回は、FOMC声明やパウエル議長の記者会見に加え、FOMCメンバーによる最新の経済見通し(SEP、Summary of Economic Projections)が公表され、そのなかでメンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」も更新されます。以下、それぞれについて主な注目点を整理していきます。


まず、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標について、弊社は4.25%~4.50%で4会合連続での据え置きを予想しており、市場でも据え置きはほぼ織り込み済みです。前回5月のFOMC声明では、「経済見通しを巡る不確実性はさらに高まっている」と「さらに」が加わり、「失業率の上昇と物価上昇のリスクが高まったと判断している」の文言が新たに追記されましたが、今回も基本的な判断は変わらないと思われます。

2025年のGDP予想は下方修正、物価予想は上方修正、ドットチャートの利下げ回数は不変か

次に、SEPについて、前回は3月の会合で公表されましたが、その後、トランプ米政権が4月2日に相互関税を発表するなど、経済見通しを策定する上での関税の前提は、3月の会合時点から大きく変わっています。そのため、弊社では主に2025年の実質GDP成長率が下方修正され、個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は上方修正される可能性が高いと考えています(図表1)。


ドットチャートでは、メンバーが適切と考える25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げ回数について、前回3月時点では、2025年と2026年は2回、2027年は1回で、「Longer run」(景気を熱しも冷やしもしない「中立金利」を意味する長期のFF金利水準)は3.00%との見方が示されました(図表2)。弊社は今回、2025年について、経済見通し修正の可能性を踏まえた上でも、利下げ回数は中央値で2回を見込んでいます。

パウエル議長は利下げを急がずFOMCは無風通過か、弊社は10月と12月の利下げ予想を維持

パウエル議長の記者会見では、引き続き今後の利下げ時期や利下げペースに関する発言が焦点となると思われます。ただ、トランプ関税を巡る不確実性は依然高い状況にある一方で、米国経済は依然として良好な状態にあることから、パウエル議長は利下げを急がず、状況を見極めるとの従来の見解を繰り返す公算が大きく、市場にとって今回のパウエル発言に目新しい材料は少ないと思われます。


なお、中東情勢の緊迫化について、現時点では原油価格やインフレへの影響を注視するという旨の言及にとどまると考えます。以上を踏まえると、今回のFOMCはおおむね無風通過となり、市場への影響は限定的とみています。弊社はトランプ関税の影響はこれから米経済にあらわれてくると想定しており、FRBは年内10月と12月の2回、25bpずつの利下げを行うとの見方を維持しています。