ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目米関税ショックが和らぎ改めて考える株価急落時の心構え

2025年5月16日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】米関税ショックが和らぎ改めて考える株価急落時の心構え

●株価急落時においては、長期の視点をしっかりと持って、株安の原因を冷静に精査することが大切。
●日経平均VI急騰後の株価は一定期間で上昇の傾向、日経平均の長期上昇トレンドも継続中。
●株安の原因で確認すべきは金融システムへの影響などの3点、関税ショックに過度な懸念は不要。

株価急落時においては、長期の視点をしっかりと持って、株安の原因を冷静に精査することが大切

トランプ米大統領は2月1日、カナダ、メキシコ、中国に追加関税を課す大統領令に署名して以降、次々と関税政策を発表しました。この間、日経平均株価は軟調に推移し、4月7日には年初来安値となる31,136円58銭をつけました(終値ベース、以下同じ)。しかしながら、4月9日に米相互関税の上乗せ分について、一部90日間の停止が発表されると、上昇に転じ、5月13日には38,183円26銭まで一気に値を戻す展開となりました。


日経平均が3月下旬から4月上旬にかけて急落した当時に比べると、現時点で米関税ショックはかなり和らいだように見受けられます。そこで今回のレポートでは、改めて株価急落時の心構えについて考えます。一般に、株価が大幅に下落した時は、長期の視点をしっかりと持って、株安の原因を冷静に精査することが大切と思われます。以下、具体的にみていきます。

日経平均VI急騰後の株価は一定期間で上昇の傾向、日経平均の長期上昇トレンドも継続中

市場の不安心理を反映する「日経平均ボラティリティーインデックス(VI)」は、日経平均が年初来安値をつけた4月7日に50を超えました(図表1)。30を超えると、不安がかなり高まっている状態とされるため、50超えは極度の不安状態といえます。ただ、過去のケースをみると、50超え後の日経平均は、1カ月後、半年後、1年後でおおむね上昇しており、今回も1カ月後は上昇しました。


さらに長期の視点でみると、日経平均は2012年以降、上昇トレンドを形成しています(図表2)。日経平均は2020年のコロナ・ショックで、下値支持線を割り込んだものの、一時的なものにとどまり、昨年8月の急落(令和のブラックマンデー)では、下値支持線を割り込むことはありませんでした。今回の米関税ショックの下げも下値支持線でしっかりサポートされており、日経平均の長期的な上昇トレンドに変化はないと判断されます。

株安の原因で確認すべきは金融システムへの影響などの3点、関税ショックに過度な懸念は不要

次に、株安の原因について確認すべきは、金融システムへの影響の有無、流動性への影響の有無、他国・他地域への影響の有無の3点です。米関税政策は、3つ目の他国・他地域への影響が懸念されますが、4月10日付レポートでも説明した通り、関税は有利な取引条件を引き出すためのカードであり、交渉次第で修正が想定され、高い関税率が長期間続くことは考えにくいことなどを踏まえると、3つ目に過度な懸念は不要と思われます。


そのため、関税が引き下げ方向へ向かう動きが確認されれば、市場の混乱は収まっていく公算が大きいと推測され、前述の長期的な視点とあわせれば、3月下旬から4月上旬にかけての日経平均急落時でも、落ち着いた行動が可能になると思われます。この先、何らかの原因で、株価が大幅に下落した時の心構えとしては、慌てずに長期の視点を持ち、株安の原因を冷静に精査することが大切と考えています。