ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目2025年5月FOMCプレビュー~今回の注目点を整理する

2025年5月1日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】2025年5月FOMCプレビュー~今回の注目点を整理する

●FF金利は大方の予想通り4.25%~4.50%で据え置き、FOMC声明も大きな変更はないとみる。
●市場はパウエル発言に注目も、金融政策については米関税政策などを見極める考えを先月示す。
●パウエル発言も目新しさはなく今回のFOMCは無風通過か、目先は米中関税交渉の進展が焦点。

FF金利は大方の予想通り4.25%~4.50%で据え置き、FOMC声明も大きな変更はないとみる

米連邦準備制度理事会(FRB)は、5月6日、7日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催します。今回はFOMCメンバーによる経済見通しや、メンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」は公表されないため、FOMC声明と、記者会見でのパウエル議長の発言が焦点となります。以下、これらについて、主な注目点を整理していきます。

 

まず、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標について、弊社は大方の予想通り、4.25%~4.50%で据え置きとみています。FOMC声明にも特に大きな変更はないと思われ、前回3月会合で追記された「経済見通しを巡る不確実性は高まっている」との文言や、昨年12月会合から続く「(政策金利の)さらなる調整の程度と時期を検討する際」という文言も維持される見通しです。

市場はパウエル発言に注目も、金融政策については米関税政策などを見極める考えを先月示す

次に、パウエル議長の記者会見では、トランプ米政権による関税引き上げなどの政策が経済に与える影響や、先行きの金融政策の運営について、どのような見解が示されるかに市場の注目が集まっています。なお、パウエル議長は4月16日の講演で、「これまで発表された関税引き上げの規模は予想を大きく上回っている」、「物価上昇や成長鈍化といった経済的な影響も同様に大きくなる可能性が高い」と述べています(図表1)。

 

また、「関税は少なくとも一時的な物価上昇を引き起こす可能性が非常に高い」とした一方、「我々の責務は、長期的なインフレ期待をしっかりと安定させ、一時的な価格水準の上昇が持続的なインフレ問題に発展しないよう確実に対処することである」との見解を示しました。そして、金融政策については、「当面、政策スタンスの調整を検討する前に、情勢が一段と明確になるのを待つ態勢が整っている」と述べ、様子見の姿勢を示しました。

パウエル発言も目新しさはなく今回のFOMCは無風通過か、目先は米中関税交渉の進展が焦点

パウエル議長の記者会見での発言は、おそらく4月16日の発言と基本的には同じ内容になり、今回のFOMCは無風通過の可能性が高いと思われます。なお、FF金利先物市場が織り込む年内25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げ回数の推移をみると(図表2)、昨年の米大統領選挙前の3回から、トランプ氏勝利後の年明け1月には1回まで減少し、その後は関税政策の発動などを受け、足元では4回まで増加しています。

 

弊社は米金融政策について、年内は6月、7月、9月の3回、25bpの利下げが行われると予想しています。目先の焦点は、累計145%に達した対中関税がどの程度まで引き下げられるかであり、現時点で対中関税は54%まで引き下げられると想定しています。この水準までの引き下げがないと、米国は景気後退(リセッション)入りするリスクが高まるため、米国と中国は関税交渉を進めていく公算が大きいとみています。