ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目一時139円台をつけたドル円とヘッドアンドショルダーについて

2025年4月23日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】一時139円台をつけたドル円とヘッドアンドショルダーについて

●ドル円は一時139円台をつけたもののベッセント氏とトランプ氏の発言を受けドル高・円安に転じた。
●為替市場では3つの山と2つの谷で形成されるドル円の「ヘッドアンドショルダー」が話題になっている。
●完成なら大幅なドル安・円高示唆も参考程度が賢明、今後トランプ氏の強気姿勢の変化に注目。

ドル円は一時139円台をつけたもののベッセント氏とトランプ氏の発言を受けドル高・円安に転じた

ドル円は日本時間(以下同じ)4月22日の午後3時前に、一時1ドル=139円89銭付近に達し、2024年9月16日以来のドル安・円高水準をつけました。その後はいったんドルを買い戻す動きが優勢となりましたが、23日の午前3時過ぎに、ベッセント米財務長官が関税を巡る中国との対立は緩和に向かうとの認識を示したことが報じられると、ドル買い・円売りが加速し、ドル円は午前6時頃に141円57銭水準まで戻りました。


さらに、午前6時を過ぎたあたりから、トランプ米大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長について「解任するつもりはない」との発言が伝わると、ドル円は午前7時半頃に143円22銭近くまで、ドル高・円安が進みました。一時139円台をつけたドル円でしたが、ベッセント氏とトランプ氏の発言を受け、米景気悪化やFRBの独立性への懸念が和らぎ、さらなるドル安・円高の進行には至りませんでした。

為替市場では3つの山と2つの谷で形成されるドル円の「ヘッドアンドショルダー」が話題になっている

なお、為替市場ではこのところ、ドル円のチャートに現れた「ヘッドアンドショルダー」が話題になっています。これは、トレンドの転換点を示すチャートパターンで、3つの山と2つの谷で形成されます。2つの谷を結んだ線を「ネックライン」といい、ドル円であれば、ドル高・円安局面で「ヘッドアンドショルダー」が現れ、ドル円レートが明確にネックラインを割り込むと、ドル安・円高局面に転じたと解釈されます。


具体的にチャートをみると(図表1)、2024年7月につけたドルの高値161円95銭水準を中央の山とし、その左に2023年11月高値の151円91銭水準の山、その右に2025年1月10日高値の158円87銭水準の山が形成されています。ネックラインは、2023年12月につけたドルの安値140円25銭水準と、2024年9月安値の139円58銭水準の2つの谷を結んだ線となります。

完成なら大幅なドル安・円高示唆も参考程度が賢明、今後トランプ氏の強気姿勢の変化に注目

ドル円がこの先、2024年9月安値の139円58銭水準を割り込んでドル安・円高が進めば、ヘッドアンドショルダーは完成します。この場合、ドル安・円高の目途は、2024年7月高値の161円95銭水準と2024年9月安値の139円58銭水準の値幅である約22円37銭を、139円58銭水準から差し引いた117円21銭水準になります。ただ、これはあくまで1つのチャートパターンの解釈であり、参考程度にとどめることが賢明と思われます。


ドル安・円高の材料は、米関税政策の強化、米国売りの加速、円安是正の強めの日米為替合意などであり、ドル高・円安の材料は、これらが逆の動きになることと考えています(図表2)。トランプ氏は、自らの強気姿勢で国内経済や金融市場に深刻な悪影響が及ぶことは避けたいというのが本音と推測され、時間の経過とともに強気姿勢は緩和方向に修正され、ドル高・円安材料の要素が強まるのではないかとみています。