ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目米相互関税の一部90日停止で株価急騰~今後の焦点を整理する

2025年4月10日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】米相互関税の一部90日停止で株価急騰~今後の焦点を整理する

●トランプ米大統領は相互関税の一部を90日停止すると発表、米主要3指数は記録的な上昇に。
●今回市場の混乱は米関税政策に起因、政策修正で他国・他地域への影響軽減、混乱収束へ。
●目先米中対立と日米関税交渉の行方が焦点、米中歩み寄りと関税交渉進展なら相場安定へ。

トランプ米大統領は相互関税の一部を90日停止すると発表、米主要3指数は記録的な上昇に

ダウ工業株30種平均は4月9日、前日比2,962ドル86セント(7.9%)高の40,608ドル45セントで取引を終え、上げ幅は算出開始以来最大を記録しました。トランプ米大統領が相互関税の上乗せ分の一部を90日間停止するとSNSに投稿したことを受け、米国株は急騰しました。S&P500種株価指数は前日比9.5%上昇、ナスダック総合株価指数は同12.2%上昇し、それぞれ2008年10月、2001年1月以来の高い上昇率となりました。


トランプ米政権は4月5日に全世界からの輸入品に一律10%の追加関税を課し、9日には国・地域ごとに割り当てた上乗せ分を発動しました。報道によると、上乗せ分の発動は90日間一時停止され、税率は10%に引き下げとなる一方、鉄鋼やアルミニウム、自動車など品目別に発動済みの関税は維持される模様です。また、報復措置を打ち出した中国に対しては強硬姿勢がさらに強まり、追加関税は累計で125%に引き上げられる見通しです。

今回市場の混乱は米関税政策に起因、政策修正で他国・他地域への影響軽減、混乱収束へ

関税を巡るトランプ発言に市場が一喜一憂する状況が続いていますが、おさえておきたいポイントは次の通りです。すなわち、①関税はいったん導入されても、その後の交渉次第で緩和方向に修正されることも想定されること。②現実的には米相互関税が長期間継続することは考えにくく、トランプ氏には、最初に厳しい方針を示して今後の交渉を有利に進め、関税を修正していく思惑があるように推測されること。


③市場の急速なリスクオフ(回避)の動きは金融危機によるものではなく、行き過ぎた関税の引き上げに起因するものであるため、市場の混乱は関税が引き下げ方向へ向かうことで収まっていく公算が大きいこと、この3点です。また、株価急落時、その原因について確認すべきは図表1の通りで、いずれも影響がなければ過度な警戒は不要と考えます。今回の相互関税は他国・他地域への影響が懸念されますが、関税の修正はこの懸念を和らげます。

目先米中対立と日米関税交渉の行方が焦点、米中歩み寄りと関税交渉進展なら相場安定へ

今後の焦点は、米中対立と日米関税交渉の行方になるとみています。米国は4月9日から中国製品に84%の追加関税を発動(累計104%)し、中国政府は同日、米国製品に50%の追加関税を課す(累計84%)と明らかにしました。米国はこれを受け、前述の通り、中国製品への関税を累計125%に引き上げるとしています。米中による関税の報復合戦は懸念材料ですが、両国が早い段階で交渉に向けて歩み寄ることができるか否かが注目されます。


日米両国はまもなく関税を巡る協議を開始する見通しですが、日本の関税見直しや非関税障壁(自動車の安全基準や農水産品に対する輸入制限など)の修正・撤廃が、主なテーマになると思われます。なお、日経平均の最近の乱高下は、長期上昇トレンド内の動きに依然とどまっています(図表2)。今後もトランプ発言に振り回される展開が予想されますが、米中の歩み寄りや日米関税交渉の進展が確認されれば、相場はかなり落ち着くとみています。