2024年6月28日
三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩
【市川レポート】TOPIXの見直しは第2段階へ~市場への影響について考える
●JPXは2022年4月の市場再編時に、TOPIXの算出方法を変更し、第1段階の見直しを実施中。
●今般、第2段階の見直しを公表、対象市場を全市場に広げ初回の入れ替えは2026年10月に。
●改善余地はまだあるが、企業にTOPIX採用を意識した経営が広がれば市場活性化につながろう。
JPXは2022年4月の市場再編時に、TOPIXの算出方法を変更し、第1段階の見直しを実施中
日本取引所グループ(JPX)は6月19日、東証株価指数(TOPIX)の新しい改革案を公表しました。そこで今回のレポートでは、その概要と市場への影響について考えます。TOPIXはもともと東証1部の全銘柄で構成されていましたが、時価総額が小さく流動性の低い銘柄も含まれるため、これらが指数連動の投資信託に自動的に買い支えられるなどの声も聞かれていました。
そのような意見を踏まえ、JPXは新市場区分の上場制度施行日(2022年4月4日)に合わせ、TOPIXの算出方法を変更しました(図表1)。構成銘柄は、移行先の新市場にかかわらず、同施行日の前営業日(2022年4月1日)時点の銘柄となり、流通株式時価総額100億円未満の銘柄については、2022年10月31日から四半期毎の最終営業日に10段階で構成比率が調整され、2025年1月最終営業日に除外されることになりました。
今般、第2段階の見直しを公表、対象市場を全市場に広げ初回の入れ替えは2026年10月に
JPXは、2022年4月のTOPIX算出方法の変更を「第1段階の見直し」と位置付けており、TOPIXの構成銘柄は25年1月には約1,700銘柄に減る見通しです。今回の新しい改革案は「第2段階の見直し」と位置付けられており、指数の連続性を維持しつつ、構成銘柄の対象市場を、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の全市場区分に広げます(図表2)。また、流動性をより重視し、銘柄の定期入れ替えを実施するなど、広範網羅性や投資対象としての機能性をさらに高めることを目指します。
今後のスケジュールは、2024年6月19日から8月18日まで意見の募集が行われ、9月末頃にルールが最終決定、公表されます。その後は周知期間を置き、初回の銘柄入れ替えは2026年10月に実施されますが、ここで継続採用されない銘柄(移行措置銘柄)は、四半期毎に8段階でウェイトが低減され(2026年10月から2028年7月まで12.5%ずつ8回)、2回目の銘柄入れ替えは2028年10月に実施されます。
改善余地はまだあるが、企業にTOPIX採用を意識した経営が広がれば市場活性化につながろう
第2段階の見直しにより、スタンダード市場とグロース市場からおよそ50銘柄が採用される見込みである一方、時価総額の小さい企業が外れることで、TOPIXの構成銘柄数は1,200程度になる見通しです。市場への影響を考えた場合、JPXはTOPIXの見直しを十分な時間をかけて行っており、また、指数の連続性の維持も重視していることから、大きな混乱は回避されるとみています。
ただ、銘柄数は米国のS&P500種株価指数(500銘柄)や欧州のストックス600(600銘柄)などに比べ依然として多く、指数内に時価総額の比較的小さい銘柄を含むなどの問題は残るため、もう一段、改善の余地はあると思われます。目先は各市場で第2段階の見直しを踏まえた物色の動きが予想されますが、中長期的に、企業がTOPIX採用を意識し、企業価値向上に取り組む流れが広がれば、市場全体の活性化につながり得ると考えます。