ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目日経平均株価が上昇基調を回復するための条件とは

2024年6月26日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】日経平均株価が上昇基調を回復するための条件とは

●日経平均の上昇基調回復には企業業績、企業改革、賃金の3点にさらなる進展の材料が必要。
●4-6月期決算で業績予想の改善期待が高まり、企業改革ではより質の高い開示が増える見通し。
●実質賃金はまもなくプラス転換、日経平均は7-9月期中に上昇基調を回復し年末42,200円へ。

日経平均の上昇基調回復には企業業績、企業改革、賃金の3点にさらなる進展の材料が必要

2024年の日経平均株価は1-3月期に20.6%上昇し、3月22日には取引時間中に一時41,000円台をつけるなど、堅調に推移しました。しかしながら、4月に入るといったん調整色が強まり、日経平均は5月以降、おおむね37,600円から39,400円のレンジ内での推移が続き、4-6月期は6月25日まで3%の下落となっています。そこで今回は、日経平均が上昇基調を回復するための条件について考えます。

 

これまで、日本株の先行きを展望するにあたり、注目しておきたい3つのポイントとして、「企業業績」、「企業改革」、「賃金」を挙げてきました。これらは1-3月期にそろって改善傾向が確認されたため、日経平均は上昇、ただ4-6月期は目新しい動きがなかったため、上昇一服となったと考えています(図表1)。したがって、日経平均が上昇基調を回復するには、この3つのポイントについて、さらなる進展の材料が必要と考えます。

4-6月期決算で業績予想の改善期待が高まり、企業改革ではより質の高い開示が増える見通し

1つ目の企業業績について、企業自身による2024年度の業績予想は現在、総じてかなり控えめな内容となっています。そのため、業績が日本株の買い材料となるには、業績予想の上方修正(少なくとも、その期待)が必要です。そこで注目されるのは、7月下旬以降に本格化する3月期決算企業の4-6月期決算です(図表2)。足元の円安地合いもあり、まずまず良好な業績の走りが確認され、業績予想の上方修正期待が高まることも想定されます。

 

2つ目の企業改革について、企業は2023年3月31日に東京証券取引所(以下、東証)から、資本コストや株価を意識した経営を要請されて以降、積極的にその取り組みと開示を行っています。こうしたなか、東証は2024年2月1日、投資家が一定の評価をしている取り組みの事例を公表しており、企業がこの内容を踏まえ、投資家の視点から資本効率改善などに取り組めば、より質の高い開示が増えることが期待されます。

実質賃金はまもなくプラス転換、日経平均は7-9月期中に上昇基調を回復し年末42,200円へ

3つ目の賃金については、物価を考慮した実質賃金の動向が注目されます。直近4月の実質賃金は前年同月比1.2%減と、25カ月連続でマイナスとなっていますが、弊社は2024春季生活闘争(春闘)の賃上げ効果により、実質賃金の前年同月比の伸びは7-9月期にプラスに転じる可能性が高いとみています。実質賃金のプラス転換は、消費回復やデフレ脱却につながることから、株価には好材料といえます。

 

以上より、企業業績、企業改革、賃金の3つのポイントについては、さらなる進展の材料が7-9月期中にも確認される公算は大きいと思われます。特に、企業改革や賃金に関する好材料は、日本企業や日本経済の構造変化の証左であり、企業業績の持続的な改善期待につながりやすく、海外投資家の日本株再評価の根拠になり得ると考えます。日経平均は7-9月期中に上昇基調を回復し、年末42,200円の着地を予想しています。