2024年2月1日
三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩
【市川レポート】2024年1月FOMCレビュー
~利下げを準備しインフレの低下待ち
●政策据え置きは予想通り、声明で利下げを含む調整の文言を追記も早期利下げ期待はけん制。
●パウエル議長は、利上げ終了と年内の利下げ開始を示唆、ただハト派過ぎないようバランスを考慮。
●FOMCは利下げを準備し、インフレの一段の低下待ちへ、ただし昨日のような米株安は行き過ぎか。
政策据え置きは予想通り、声明で利下げを含む調整の文言を追記も早期利下げ期待はけん制
米連邦準備制度理事会(FRB)は、1月30日、31日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標について、市場の予想通り5.25%~5.50%で据え置くことを決定しました。以下、今会合での主な決定事項を振り返り、それぞれの意味合いを考えます。まず、FOMC声明について、今回は新たな文言がいくつか追記されました。
政策決定の際の表記は、「いくらか追加的な政策引き締め(policy firming)の程度を決定する際」から「FF金利の目標レンジの調整(adjustments)を検討する際」に変更されましたが、「調整」には利下げも含むと解釈されます。また、「インフレが持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切ではないと考えている」との文言が新たに加わり、声明で早期利下げ期待をけん制する形となりました。
パウエル議長は、利上げ終了と年内の利下げ開始を示唆、ただハト派過ぎないようバランスを考慮
次に、パウエル議長の記者会見における主な発言を確認します。パウエル議長は、「政策金利はこの引き締めサイクルのピークに達している可能性が高い」とし、「経済が予想通りに幅広く進展すれば、今年のある時点で政策の引き締めを縮小し始めるのが適切であろうと考えている」と述べました。これは、利上げの終了と条件付きながら年内の利下げ開始を示唆するものと解釈されます。
ただ、その一方で、「経済見通しは不透明」、「インフレ・リスクには引き続き細心の注意を払っている」、「適切であれば、現在のフェデラルファンド金利の目標レンジをより長く維持する用意がある」と述べ、過度にハト派的にならないようにバランスをとった発言もみられました。また、3月の利下げについて「最も可能性の高いケース、ないし基本シナリオと呼ばれるものでは恐らくないだろう」との見解を示しました。
FOMCは利下げを準備し、インフレの一段の低下待ちへ、ただし昨日のような米株安は行き過ぎか
また、量的引き締め(QT)の取り扱いについては、「3月の次回会合で詳細な議論を開始する計画」と述べました。以上より、今回のFOMCは、市場に利下げ開始を意識させつつも全体としてバランスを保って早期利下げ期待をけん制、インフレが持続的に2%に向かっているとの確信が深まるのを待つというメッセージを市場に送ったと考えられます。なお、1月31日の米金融市場は、長期金利低下、ドル安・円高、株安で反応しました(図表1)。
FF金利先物市場で織り込まれる3月の米利下げ確率は同日50%をやや上回り、依然として3月の利下げが意識されています(図表2)。弊社は引き続き、利下げ開始を5月と予想していますが、いずれにせよ利下げの時期は近く、先行きは緩やかな長期金利の低下と緩やかなドルの減価が見込まれます。米景気は適切な利下げで軟着陸(ソフトランディング)に至ると考えており、昨日のような株安は行き過ぎと思われます。