2023年5月25日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】海外投資家の地域別日本株売買状況

●海外勢は4月に約2兆2,000億円買い越したが、欧州が約1兆7,000億円の買い越しで最大に。
●3月の海外勢の大幅売り越し時も欧州が最大の売り手に、そこで過去の地域別売買状況を検証。
●過去10年で欧州が最大の売買シェアを有しアジアのシェアも増加、全体の売買金額は増加傾向。

海外勢は4月に約2兆2,000億円買い越したが、欧州が約1兆7,000億円の買い越しで最大に

日本取引所グループは、海外投資家の日本株売買状況について、地域別に月間と年間のデータを公表しています。具体的に、地域は「北米」、「欧州」、「アジア」、「その他地域」の4つに分類されています。そこで今回のレポートでは、直近の月間データである4月分を用いて、地域別に海外投資家の日本株売買状況を検証するとともに、年間データで2013年から2022年までの地域別売買状況の推移を振り返ります。

 

はじめに、4月のデータからみていくと、海外投資家は4月に現物株を約2兆2,000億円買い越しました。買い越し額が2兆円を超えるのは、2017年10月以来、5年半ぶりのことで、海外投資家の買いが、新年度入り後の日本株上昇の大きな原動力になったと考えられます。地域別にみると、欧州が約1兆7,000億円の買い越しと、最大の買い手だったことが分かります(図表1)。

3月の海外勢の大幅売り越し時も欧州が最大の売り手に、そこで過去の地域別売買状況を検証

なお、海外投資家は、米欧の金融不安でリスク回避姿勢が強まった3月には、現物株を約2兆3,000億円売り越しており、このうち欧州が約1兆3,000億円の売り越しと、最大の売り手でした。海外投資家は、4月の買い越しで3月の売り越しをほぼ埋めた形になりましたが、投資部門別売買状況の週間データをみると、5月に入ってからも、第1週、第2週と買い越しを続けている動きが確認されています。

 

このように、海外投資家は3月に現物を大きく売り越し、4月に大きく買い越しましたが、いずれにおいても欧州の存在感が突出しています。そこで、次に2013年から2022年までの年間データを用い、地域別売買状況の推移を確認してみます。手順としては、地域別に売買金額を合計し、全体の売買金額に占める割合を算出し、年間の地域別売買シェアの変化をみていきます。

過去10年で欧州が最大の売買シェアを有しアジアのシェアも増加、全体の売買金額は増加傾向

結果は図表2の通りで、2013年から2022年の間、欧州が最大の売買シェアを占めていることが分かります。欧州のシェアは、2013年が59.4%でしたが、2022年には74.5%に達しており、この10年で緩やかながらも増加傾向にあります。また、アジアについても、シェアは2013年の9.4%から2022年は17.1%に増加しています。一方、北米のシェアは、2013年の30.8%から2022年は7.9%に減少しており、近年ではアジアを下回っています。

 

全体の売買金額の総計に着目すると、2013年は約670兆円でしたが、2022年は約1,041兆円に増加しています。以上より、日本株に投資する海外投資家については、欧州の投資家が最大の売買シェアを有し、近年ではアジアの投資家の存在感が高まっているといえます。また、全体の売買金額の総計も増加傾向にあることから、海外投資家は日本株の売買を増やしてきていると推測されます。