ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目中国のゼロコロナ政策を巡る動きと市場への影響を考察する

2022年11月30日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】中国のゼロコロナ政策を巡る動きと
 市場への影響を考察する

●中国では、ゼロコロナ政策に対する市民の不満が高まり、主要都市で抗議が広がる異例の事態に。

●現行のゼロコロナ政策下での感染拡大はセンチメントを悪化させ、経済成長の押し下げにつながる。

●当局はゼロコロナ政策の調整を明言、市場は進展を見守ることに、引き続き中国リスクは要注意。

中国では、ゼロコロナ政策に対する市民の不満が高まり、主要都市で抗議が広がる異例の事態に

中国ではこのところ、再び新型コロナウイルスの感染が拡大しています。中国国家衛生健康委員会の11月28日の発表によると、国内の新型コロナウイルス新規感染者は、11月27日に5日連続で最多記録を更新したことが確認されました。中国では、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策が継続されているため、感染再拡大に伴い、ロックダウン(都市封鎖)や移動制限の対象も増加しています。


こうした状況のなか、中国の主要都市では先週末、ゼロコロナ政策への抗議が広がりました。中国国家衛生健康委員会は11月11日に、入国者の隔離期間短縮など、コロナ政策の緩和を発表していましたが、地方レベルで実現できておらず、市民の強い不満につながっている模様です。中国では、共産党のもとで厳しい言論統制が敷かれるため、党や政府への抗議活動が、複数都市で一斉に行われることは、異例の事態といえます。

現行のゼロコロナ政策下での感染拡大はセンチメントを悪化させ、経済成長の押し下げにつながる

中国のコロナ感染再拡大とゼロコロナ政策を巡る混乱は、中国経済や金融市場にとって、警戒を要する材料です。弊社は中国の実質GDP成長率について、2022年は前年比+2.9%、2023年は同+4.4%を予想しています。既存の減税などの景気対策で、経済は緩やかに持ち直すものの、ゼロコロナ政策と不動産問題(住宅引き渡し遅延に抗議する住宅購入者のローン返済停止でローンの不良債権化が懸念される問題)で、成長ペースは抑制されるとみています。


弊社ではこの先、ゼロコロナ政策は過度な防疫措置の是正が徐々に行われ、不動産問題は、法整備や不動産業界への流動性支援が必要になると考えています。従って、現時点でのゼロコロナ政策では、今回のようにコロナの感染が再拡大すると、当然ながら防疫措置は強化されるため、センチメント(市場心理)は悪化し、弊社の予想成長率を押し下げる要因となります。

当局はゼロコロナ政策の調整を明言、市場は進展を見守ることに、引き続き中国リスクは要注意

中国でロックダウンが強化されれば、中国進出企業が工場の操業を停止するなどの思惑から、中国関連株の下落につながりやすく、また、中国経済の成長ペースが鈍化するとの見方が強まれば、中国株の下落や、原油などの商品価格の下落につながりやすいと考えられます。実際、コロナの感染が再拡大し、抗議活動が広がるまでの期間、市場の動きをみると、おおむね想定された反応が確認されます(図表1)。


なお、中国国家衛生健康委員会は11月29日、ゼロコロナ政策は常に調整を続けるとし、当局者は過剰な規制を避ける必要があると述べましたが、全面見直しの考えは示されませんでした。市場はこの先、コロナ政策を巡る当局の動きを見守ることになると思われます。なお、本日発表された中国の11月購買担当者景気指数(PMI)は、悪化傾向が確認されました(図表2)。引き続き中国リスクには注意が必要と考えています。