ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目米国がねじれ議会となった場合の心構え

米国がねじれ議会となった場合の心構え

2022年10月28日

●米中間選挙でねじれ議会となれば経済への影響を懸念する声も、そこで過去のねじれを振り返る。

●実はねじれ議会はよくある現象、ただ財政の責任が不明確となり、債務上限問題が浮上しやすい。

●過去の経緯からねじれ議会では政府機関の閉鎖リスクに注意、ただ株価への過度な警戒は不要。

米中間選挙でねじれ議会となれば経済への影響を懸念する声も、そこで過去のねじれを振り返る

10月27日付レポート「2022年11月米中間選挙の注目点を整理する」では、中間選挙後に予想されるバイデン政権の政策について、選挙結果のシナリオ別にまとめました。現在、民主党が上下両院で多数派となっていますが、直近の議席獲得予想では、上院がほぼ互角、下院は共和党が優勢となっているため、シナリオは、①上院で民主党勝利、下院で共和党勝利、②上下両院で共和党勝利、の2つとしました。


①は、上院と下院で多数派政党が異なるケース、②は大統領の出身政党と、議会(上下両院)の多数派政党が異なるケースで、いずれも、いわゆる「ねじれ議会」とされます。11月8日の中間選挙の結果、実際にねじれ議会が発生した場合、バイデン政権の政策遂行に支障が生じ、米国の経済や株式市場への影響を心配する声も一部に聞かれます。そこで、今回のレポートでは、米国のねじれ議会の歴史を簡単に振り返ってみます。

実はねじれ議会はよくある現象、ただ財政の責任が不明確となり、債務上限問題が浮上しやすい

米議会の会期は2年間で、奇数年の1月3日の正午に開始し、2年後の1月3日の正午に終了します。図表は、第97議会(1981年1月3日~1983年1月3日)から第117議会(2021年1月3日~2023年1月3日)までにおける、ねじれの状況を示したものです。これをみると、過去21議会のうち、15議会がねじれとなっており(第107議会も含む)、米国におけるねじれ議会は、よくある現象であることが分かります。


なお、ねじれ議会では、財政に関する責任の所在が不明確となりやすいため、債務上限問題が浮上するリスクが高まります。債務上限とは、米連邦政府が国債発行などで借金できる債務残高の枠のことです。債務が法定上限に達すると、政府は議会の承認を得て、上限を引き上げる必要がありますが、引き上げられないと、国債の新規発行ができなくなり、政府機関の閉鎖や、債務不履行(デフォルト)に陥る恐れがあります。

過去の経緯からねじれ議会では政府機関の閉鎖リスクに注意、ただ株価への過度な警戒は不要

図表の通り、政府機関の閉鎖は、過去20議会のうち、7議会で10回発生しています。また、7議会のうち6議会はねじれ議会であり、議会がねじれていないにもかかわらず、政府機関が2回も閉鎖したのは第115議会で、当時の大統領はトランプ氏でした。このような過去の経緯を踏まえると、中間選挙後にねじれ議会となった場合は、政府機関の閉鎖リスクについては、注意が必要と思われます。


なお、ダウ工業株30種平均について、議会の会期2年間の騰落率をみると(議会開始の前月末から終了の前月末までで計算)、過去20議会のうちマイナスとなったのは、第107議会と第110議会の2議会だけでした。ただ、時期的に前者はITバブル崩壊、後者はリーマン・ショックの影響が大きいと考えられます。そのため、中間選挙後にねじれ議会となっても、それに起因する株安の恐れは小さく、株価への過度な警戒は不要とみています。