ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目日経平均株価は依然として長期上昇トレンドを維持

日経平均株価は依然として長期上昇トレンドを維持

2022年9月12日

●日経平均は年初からレンジ相場にあるが、厳しい市場環境を踏まえると、底堅い動きと評価できる。

●長期では依然上昇トレンドが継続中、過去にチャイナ・ショックや米中貿易摩擦での下げを支えた。

●コロナ・ショックで下値支持線を割り込んだが一時的、上昇トレンドのなか過度な下値警戒は不要。

日経平均は年初からレンジ相場にあるが、厳しい市場環境を踏まえると、底堅い動きと評価できる

日経平均株価は年初から足元まで、27,000円を中心に上下2,400円程度のレンジ内での推移が続いています。もう少し詳しくみると、1月5日に年初来高値の29,388円16銭をつけた後、下落に転じ、3月9日に年初来安値となる24,681円74銭をつけています(取引時間中、以下同じ)。以降、下値は徐々に切り上がりましたが、上値は8月17日に29,222円77銭をつけたものの、年初来高値の更新には至っていません。


今年は2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始し、これを機に原油などの資源価格が急騰、世界的にインフレが深刻な問題となるなか、米連邦準備制度理事会(FRB)は3月に利上げを開始し、その後も大幅利上げを継続しています。ここまで上値の重い印象の日経平均株価ですが、このようなかなり厳しい市場環境を踏まえると、底堅い動きと評価できます。

長期では依然上昇トレンドが継続中、過去にチャイナ・ショックや米中貿易摩擦での下げを支えた

ここで、日経平均株価の現在の立ち位置について、長期的な観点から考えてみます。日経平均株価は、2013年5月高値と2018年1月高値を結んだ上値抵抗線と、2012年10月安値と2016年6月安値を結んだ下値支持線によって、上昇トレンドを形成しています(図表)。足元の日経平均株価は、トレンドを形成する2本線の中にしっかりと入っていますので、依然として長期上昇トレンドを維持していると解釈できます。


このトレンド内で、日経平均株価を大きく押し下げた主な出来事としては、2015年8月の「チャイナ・ショック」や、2018年秋口の米中貿易摩擦問題の悪化、2020年春先の「コロナ・ショック」があります。日経平均株価は、チャイナ・ショックで2015年8月から2016年6月まで29.0%下落し、米中貿易摩擦問題の悪化で2018年10月から12月まで22.5%下落しましたが、下値支持線を大きく割り込むことはありませんでした。

コロナ・ショックで下値支持線を割り込んだが一時的、上昇トレンドのなか過度な下値警戒は不要

ただ、コロナ・ショックの際、日経平均株価は2020年1月から3月まで32.2%下落し、下値支持線を大幅に割り込みました。新型の未知のウイルスに対する先行き不透明感から、株式市場は一気にリスクオフ(回避)に傾きましたが、図表のローソク足をみると、2020年6月には下値支持線を回復しており、トレンドラインの割り込みは一時的なものにとどまりました。


以上を踏まえると、10年ほど続いているこの長期上昇トレンドは、相応に強いものと考えられます。なお、上値抵抗線と下値支持線は、9月末時点で32,200円、25,900円、12月末時点で32,650円、26,350円に位置しています。米国の物価動向や利上げペースについては、まだ見通しにくいところはありますが、日経平均株価の長期上昇トレンドは維持されており、あまり過度に下値を警戒する必要はないように思われます。