ウクライナ情勢の要点整理

2022年2月1日

●ウクライナは91年にソ連崩壊で独立、以降国内で親ロシア派と親欧米派による権力闘争が継続。

●ロシアはウクライナを兄弟国として特別視、国防の観点からもウクライナのNATO加盟は容認できず。

●米国などはNATO東方拡大を容認、ただロシアがウクライナに再侵攻する利点は現時点で少ない。

ウクライナは91年にソ連崩壊で独立、以降国内で親ロシア派と親欧米派による権力闘争が継続

ウクライナを巡る情勢が緊迫しています。報道によれば、ロシアは去年11月ごろから、ウクライナ東部の国境付近に推定10万人規模の部隊を集結させている模様です。これに対し、欧米諸国はロシアによるウクライナ再侵攻を警戒し、ウクライナ周辺の東欧地域に派兵する準備に入っています。以下、ウクライナ情勢緊迫化の背景を整理し、今後予想される展開について考えます。


まず、ロシアとウクライナの歴史的な関係を振り返ると、ロシアもウクライナも、ソビエト連邦を構成する共和国でしたが、1991年にソビエト連邦が崩壊すると、ウクライナは同年に独立を果たしました(図表1)。独立以降、ウクライナでは、親ロシア派と親欧米派による権力闘争が続いており、2019年に就任したゼレンスキー大統領は、親欧米派とされています。

ロシアはウクライナを兄弟国として特別視、国防の観点からもウクライナのNATO加盟は容認できず

なお、ウクライナ東部はロシアと民族や宗教も同じであることなどから、ロシアはソビエト連邦崩壊後も、ウクライナを兄弟国として、特別な存在と考えてきました。2014年にウクライナで親ロシア派のヤヌコビッチ政権が崩壊すると、ロシアはウクライナ南部のクリミア半島に侵攻して併合を宣言し、東部の一部を支配する親ロシア派勢力を支援してきました。


ロシアがウクライナを重視する理由の1つが、北大西洋条約機構(NATO)の存在です。ソビエト連邦が崩壊すると、かつて東側陣営だったポーランドやチェコ、ソビエト連邦構成共和国だったバルト3国が次々とNATOに加わりました。NATOの東方拡大は、ロシアにとって周辺国への影響力低下と国防上の脅威につながるため、プーチン政権にとって、ウクライナがNATOに加盟するような動きは、決して容認できないということになります。

米国などはNATO東方拡大を容認、ただロシアがウクライナに再侵攻する利点は現時点で少ない

ロシアはNATOの東方拡大停止の確約などを強く求めていますが、米国とNATOは1月26日、ロシア側の要求を拒否したことを明らかにしました。米国はすでに、NATOが多国籍部隊の東欧諸国への派遣を決めれば、最大8,500人規模の米軍を派遣する準備に入っており、また、これとは別に、英国などと共同で、ルーマニアやブルガリア、ハンガリーに1,000人規模の軍を送る案も報じられています。


仮にロシアがウクライナに再侵攻し、欧米諸国による大規模な経済制裁が課された場合(図表2)、原油などの供給不安の高まりなどから、金融市場への深刻な影響も懸念されます。ただ、現時点ではロシアが経済制裁を課されてまでも再侵攻するメリットは少ないように思われます。ウクライナ情勢は慎重な見極めが必要ですが、欧米諸国とロシアは今後も協議を継続し、軍事衝突を避けるべく、着地点を探る可能性が高いとみています。