新たなコロナ変異株が検出~日本株への影響を考える
2021年11月26日
●日経平均は南アフリカでコロナの新たな変異株が確認されたとの報道を受け28,000円台に下落。
●新たな変異株の感染拡大に対する警戒感が強まり、空運業、非鉄金属、鉄鋼などが大きく下落。
●仮に感染拡大となっても昨年の実例で確認された通り、政策対応次第で株価上昇も想定される。
日経平均は南アフリカでコロナの新たな変異株が確認されたとの報道を受け28,000円台に下落
日経平均株価は9月14日に年初来高値となる30,795円78銭(取引時間中、以下同じ)をつけたあと、米国のインフレ懸念や、中国の電力不足問題などを嫌気して大きく調整し、10月6日には27,293円62銭の安値をつけました。その後は、押し目買いなどから、徐々に下値の水準を切り上げましたが、節目の30,000円に近づく場面では、戻り売りに押され、しばらく上値の重い展開が続いていました。
こうしたなか、南アフリカの国立伝染病研究所などは11月25日、南アフリカで新型コロナウイルスの新たな変異株が確認されたと発表しました。報道によれば、新たな変異株は遺伝子に多くの変異が生じており、高い感染力を持つ恐れがあるため、専門家が慎重に検証しているとのことです。これを受け、日経平均株価は本日11月26日、寄り付きから大きく値を下げ、29,000円を大きく割り込みました。
新たな変異株の感染拡大に対する警戒感が強まり、空運業、非鉄金属、鉄鋼などが大きく下落
新たな変異株の感染例は、南アフリカのほか、隣国のボツワナや香港でも確認されており、英国は11月25日、南アフリカと隣接するボツワナなど5カ国の計6カ国について、渡航制限を強化する措置を発表しました。また、英国のジャビド保健相は、新たな変異株について、ワクチンの効果は低い可能性があるとの認識を示しており、市場では新たな変異株の感染拡大に対する警戒感が一気に強まったと推測されます。
なお、東証33業種指数について、昨日からの下落率の大きい順に並べると、図表1の通りになります。感染拡大となれば、国際的な人の往来が再開する時期はさらに遠のくとの思惑から、空運業の下落率が最も大きくなっています。また、世界的に景気が冷え込むとの懸念から、非鉄金属や鉄鋼なども大きく下げています。なお、時間外取引でWTI原油先物価格が下落しており、電気・ガス業やパルプ・紙は下位に位置しています。
仮に感染拡大となっても昨年の実例で確認された通り、政策対応次第で株価上昇も想定される
日経平均株価は、200日移動平均線(本日28,947円付近に位置)を割り込んだため、しばらく下値を試す動きが予想されます。弊社は10-12月期の日経平均株価の下値目処について、27,200円と、前述の10月6日安値付近に設定しています。よほど市場が混乱しない限り、直ちにこの水準をつける公算は小さいと思いますが、日経平均株価は当面、欧米株の動向をにらみつつ、新たな変異株に関する続報を待つことになります。
なお、昨年の実例から、コロナの感染が拡大しても、緩和的な金融政策、積極的な財政政策、感染抑制対策が打ち出されていれば、株価は上昇することが確認されています(図表2)。これは、政策対応によって、足元で感染が拡大しても、先行きの景気や企業業績は回復するという期待が市場に形成されるためです。そのため、仮に今回、新たな変異株による感染が拡大した場合でも、政策対応次第で株価は上昇することも考えられます。