ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目日経平均株価の急騰は先物やオプションの影響か

日経平均株価の急騰は先物やオプションの影響か

2021年9月8日

●日経平均株価は、9月限月の先物とオプションの取引最終日である9月9日を前に大きく上昇した。

●最近のオプションと先物の動向を踏まえると、コールの売り手によるデルタヘッジが行われた可能性も。

●デルタヘッジなどに起因する裁定取引が日経平均急騰の一因、目先はSQ後の株価動向に注目。

日経平均株価は、9月限月の先物とオプションの取引最終日である9月9日を前に大きく上昇した

日経平均株価を原資産とする金融派生商品(デリバティブ)に、日経225先物や、日経225オプションがあります。これらは取引期間が決められており、取引が満期を迎える月を限月(げんげつ)と呼びます。日経225先物の限月は、3月、6月、9月、12月で、日経225オプションの限月は毎月です。各限月の第2金曜日が満期日となり、この日に算出される特別清算指数(SQ)で取引が決済されます。


9月10日は、先物とオプションを同時に決済する「メジャーSQ」の算出日です。先物やオプションを売買している投資家は、取引最終日(SQ算出日の前営業日、すなわち9月9日)までに、ポジションをどうするか判断しなければならず、最終日に近づくと、その判断に基づく取引で、相場が大きく変動することがあります。この観点から、最近、日経平均株価が急騰している背景を探ります。

最近のオプションと先物の動向を踏まえると、コールの売り手によるデルタヘッジが行われた可能性も

まず、1つの例を考えます。日経平均株価が29,000円を下回って推移している時、ある投資家が、9月限月の日経225オプションについて、行使価格29,000円のコール(日経平均株価を29,000円で買う権利)を売り建てたとします。その後、日経平均株価が29,000円を超えて大きく上昇したとすれば、コールの価格も、権利行使の確率が高まって上昇するため、コール売りポジションの評価損は拡大します。


しかしながら、この投資家が別途、日経225先物を購入すれば、日経平均株価の上昇による先物買いポジションの評価益で、コール売りポジションの評価損を補填できます。これを「デルタヘッジ」といいますが、実際に、コールオプションの行使価格別建玉(たてぎょく、未決済のポジション)の大きさと(図表1)、先物の売買高の急増をみると(図表2)、最近の日経平均株価の上昇に伴い、デルタヘッジが行われたと推測されます。

デルタヘッジなどに起因する裁定取引が日経平均急騰の一因、目先はSQ後の株価動向に注目

先物の価格は、コールの売り手によるデルタヘッジで上昇することもありますが、単に先物を売っていた投資家が、日経平均株価の上昇を受け、先物を買い戻すことでも上昇します。いずれの場合でも、先物価格が上昇して現物価格よりも高くなると、別の取引主体が、先物を売って、同時に現物を買う「裁定買い」取引を行うことがあり、これが現物価格急騰の一因となります。


裁定買い残高も増加していることから(図表2)、最近の日経平均株価の急騰は、先物やオプションに絡む裁定買い取引が影響したと考えられます。ただ、通常このような動きは、SQ通過後に一巡する傾向があります。なお、SQは9月10日の朝に算出されます。日経平均株価が同日以降、SQ値を超えて推移すれば、相場の地合いはかなり強いと判断されるため、SQ後の株価動向は要注目です。