トヨタショックと日本株

2021年8月20日

●トヨタが来月4割減産との報を受け同社や同社グループおよび他の自動車メーカーの株価が下落。

●トヨタの報道で国内市場全体に動揺が広がったが、医薬品など一部銘柄に上昇の動きもみられた。

●東南アジアの感染動向は改めて警戒すべき材料に、日本株は上値の重い展開がしばらく継続か。

トヨタが来月4割減産との報を受け同社や同社グループおよび他の自動車メーカーの株価が下落

トヨタ自動車は8月19日、9月の世界の自動車生産台数について、90万台弱としていた当初の計画から4割程度減少し、50万台強になる見通しを明らかにしました。世界的な半導体不足の影響が相対的に軽微とされてきたトヨタ自動車でしたが、今回は東南アジアでの新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化したことで、現地での部品調達が停滞し始め、国内外の工場が休止を迫られる格好になりました。


この報道を受け、トヨタ自動車株が前日比4.4%下落したほか、トヨタ自動車グループ株では、アイシンが5.2%、豊田通商が4.4%、デンソーが4.3%、豊田自動織機が3.8%、それぞれ前日から下落しました。また、他の自動車メーカーの株にも売りが波及し、SUBARUが2.8%、ホンダとマツダが2.7%、日産自動車が2.6%、それぞれ前日から株価水準を切り下げました。

トヨタの報道で国内市場全体に動揺が広がったが、医薬品など一部銘柄に上昇の動きもみられた

なお、経済産業省の調査(2020年9月1日)によれば、国内企業の現地法人数は、2019年度末時点で、25,693社に達しています。製造業では自動車などの輸送機械が2,398社と最も多く、また地域別の分布比率は、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の28.5%が中国に次いで2番目の高さです(図表1)。そのため、東南アジアでのコロナの感染拡大というリスクが改めて意識され、国内株式市場全体に動揺が広がりました。


日経平均株価は8月19日、前日比1.1%下落し、東証株価指数(TOPIX)は同1.4%下落しました。ただ、日経平均株価の構成銘柄をみると、必ずしも225銘柄全てが下落した訳ではなく、下落は190銘柄、上昇は31銘柄、不変は4銘柄でした。上昇率の大きい上位20銘柄の業種は、主に医薬品、食料品、情報・通信業ですが(図表2)、これらは前述の調査において、現地法人数が相対的に少なかった業種です。

東南アジアの感染動向は改めて警戒すべき材料に、日本株は上値の重い展開がしばらく継続か

同日の欧州市場では、ドイツ株式指数(DAX)が前日比1.3%下落し、FTSE100種総合株価指数も同1.5%下落しましたが、これらは米量的緩和の縮小(テーパリング)を警戒した動きとの指摘が目立ちました。また、米国市場では、ダウ工業株30種平均が続落したものの、S&P500種株価指数とナスダック総合株価指数は小幅に反発しました。つまり、今回の減産報道は、海外でそれほど材料視されなかったように見受けられます。


トヨタ自動車は、今年度の930万台という生産計画や業績予想は修正せず、9月の減産は織り込んでいたとしています。そのため、減産報道は市場でほどなく消化されるとみられますが、東南アジアのコロナ感染動向は、改めて警戒すべき材料になりました。これに加え、国内ではコロナの感染が続いており、秋に政治イベント(自民党総裁選や衆院選)も控えていることから、日本株は上値の重い展開が、今しばらく続くと思われます。


※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。