バイデン氏の追加経済対策は想定よりも規模拡大か

2021年2月4日

●民主党は追加経済対策に関する共和党案では規模が不十分とし財政調整措置の発動を準備。
●予算決議成立後、財政調整措置により、歳出のうち義務的経費の変更が民主党単独で可能に。

●追加経済対策の規模は弊社予想の約1兆ドルを上回る可能性も、成立まで時間的余裕はない。

民主党は追加経済対策に関する共和党案では規模が不十分とし財政調整措置の発動を準備

バイデン米大統領は大統領就任前の1月14日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する1.9兆ドル規模の追加経済対策、「American Rescue Plan」を公表しました。当時の報道によると、バイデン氏は追加経済対策の関連法案を議会で可決するにあたり、共和党との合意を図るとみられていました。基本的に共和党は財政拡大に慎重なため、弊社は追加経済対策の規模について、最終的には1兆ドル程度に落ち着くと考えていました。


バイデン氏は2月1日、追加経済対策を巡り共和党上院議員10人と会談しましたが、その際、共和党側からは、政府支出を6,180億ドル程度に抑える対案が提示されました。しかしながら、民主党は共和党案の規模では不十分とし、2月2日に上下両院で追加経済対策に関する「予算決議案」の審議を始める動議を可決し、「財政調整措置」の発動を視野に入れ始めました。

予算決議成立後、財政調整措置により、歳出のうち義務的経費の変更が民主党単独で可能に

財政調整措置とは、「財政調整法」に基づく審議手法のことです。迅速な法案成立のため、審議時間は20時間に制限され、上院での法案は全100議席中51議席の単純過半数で可決されます。そのため、民主党は財政調整措置により、単独で法案の可決が可能となります。財政調整措置には、財政調整法の成立が必要ですが、その前段階として、前述の予算決議案の審議と成立が必要になります(図表1、2)。


なお、米国の歳出のうち、約3分の1は「裁量的経費」で、残りの約3分の2は「義務的経費」です。裁量的経費(国防費など)は、分野毎の「歳出予算法」で歳出権限が付与され、議会で毎年度の議決が必要です(米国で昨年末に成立したのは歳出予算法)。一方、義務的経費(社会保障など)は、恒久法で歳出権限が付与され、毎年度の議決は不要です。義務的経費の変更は法改正を伴いますが、ここで財政調整法を適用することができます。

追加経済対策の規模は弊社予想の約1兆ドルを上回る可能性も、成立まで時間的余裕はない

改めて追加経済対策の中身をみると、州・地方政府の財政支援など、一般に裁量的経費となるような項目も多いため、財政調整措置でも大幅な歳出拡大は難しいように思われます。ただ、裁量的経費となるようなものも形式的に義務的経費として扱う事例は過去に多くみられており、今後は、民主党がどの項目を財政調整措置の対象(すなわち義務的経費)とするかが、追加経済対策の最終的な規模を見通す上で、重要なポイントになります。


なお、財政調整措置を用いるには、事前に予算決議案と財政調整法案を上下両院に通す必要があり、かなりの時間を要します。バイデン氏は追加経済対策のなかで、失業給付の特例加算について、9月までの延長と週400ドルの上乗せを盛り込んでいますが、特例加算の期限は3月14日です。追加経済対策については、最終的な規模が弊社予想の1兆ドル程度を上回る可能性が出てきましたが、成立までの時間的な猶予は、あまりありません。