米追加経済対策と米長期金利と米ドルの行方

2021年1月14日

●5日の上院決選投票でトリプルブルーが成立、追加経済対策期待で米長期金利と米ドルが上昇。
●市場の焦点は追加経済対策の規模と成立時期に、いずれもプロセス次第で変わる可能性がある。
●バイデン政権は財政拡張の見通しで、量的緩和も継続、米長期金利と米ドルは緩やかに上昇へ。

5日の上院決選投票でトリプルブルーが成立、追加経済対策期待で米長期金利と米ドルが上昇

米10年国債利回りは、昨年の夏場以降、緩やかに水準を切り上げてきましたが、ドル円はゆっくりとドル安・円高が進みました。これは、昨年の春先、米国で大型の経済対策が実施されたと同時に、量的緩和が再開されたことの影響が大きいと思われます。つまり、景気回復見通しで期待インフレ率が大きく上昇した一方、量的緩和で名目金利の上昇が抑制され、その結果、実質金利がマイナス圏に沈み、ドル安が進んだものと考えられます(図表1)。

ただ、足元ではこの流れに変化がみられます。1月5日の米ジョージア州上院決選投票の結果、大統領と上下両院を民主党が主導する「トリプルブルー」が成立すると、市場ではバイデン次期政権が新たな追加経済対策を打ち出すとの見方が広がりました。これを受け、財政赤字拡大の思惑から、米10年国債利回りは今週、一時1.18%台まで上昇し(価格は下落)、ドル円は一時104円40銭水準までドル高・円安が進みました。

市場の焦点は追加経済対策の規模と成立時期に、いずれもプロセス次第で変わる可能性がある

このような動きを踏まえると、バイデン次期政権の財政政策は、今後の米10年国債利回りとドル円を見通す上で、極めて重要な要素になると思われます。これまで実施されてきた米経済対策は図表2の通りです。バイデン氏は1月8日、個人への直接給付金増額を含む、数兆ドル規模の追加経済対策が直ちに必要と述べており、市場では経済対策の規模と成立時期への関心が高まっています。

新たな追加経済対策については、①2021年度予算を調整して成立させる方法、②通常の法案として成立させる方法、の2つがあります。①の場合、財政調整措置により、上院で民主党の単独過半数で可決可能ですが、事前に予算決議案と財政調整法案を上下両院に通す必要があり、かなりの時間がかかります。②の場合、上院共和党の理解を求める必要があり、規模縮小も見込まれます。

バイデン政権は財政拡張の見通しで、量的緩和も継続、米長期金利と米ドルは緩やかに上昇へ

ブルームバーグ社は1月13日、関係者の話として、バイデン氏は追加経済対策について共和党との合意を図る方針と報じました。これは、前述の②の方法にあたるため、バイデン氏が1月8日に言及した数兆ドル規模の実現は難しくなります。弊社は1兆ドル程度の規模を予想していますが、これでも2021年の米経済成長率を0.5%ポイント程度押し上げることができるとみています。なお、追加経済対策は1月14日の公表予定です。

こうしたなか、米連邦準備制度理事会(FRB)高官からは、量的緩和の長期継続(ブレイナード理事)や、早期利上げ否定(クラリダ副議長)のコメントが相次いでいます。そのため、バイデン次期政権が財政拡大政策を推進しても、米10年国債利回りの上昇はゆっくりと進む可能性が高く、ドル円については、この先、ドル安・円高の流れが徐々に反転していくと考えています。