米民主党は上院主導権奪還へ~トリプルブルーに対する市場の反応
2021年1月7日
●報道では米ジョージア州上院決選投票で民主党が2議席を確保、トリプルブルーが成立の見通し。
●民主党は財政調整措置により単独で法案可決が可能、増税と景気対策規模拡大が現実的に。
●民主党勝利の報道に市場は財政拡大を織り込む反応、増税など懸念材料の影響はまだ限定的。
報道では米ジョージア州上院決選投票で民主党が2議席を確保、トリプルブルーが成立の見通し
米ジョージア州では1月5日、上院2議席を巡る決選投票が実施されました。補欠選1議席については、共和党のロフラー上院議員と民主党候補のワーノック氏の争いとなりましたが、複数の米メディアはワーノック氏の勝利を報じました。また、改選1議席については、共和党のパーデュー上院議員と民主党候補のオソフ氏の争いとなりましたが、同じく複数の米メディアがオソフ氏の勝利と、民主党の2議席確保を報じました。
報道にもとづけば、上院(定員100議席)において、共和党が50議席、民主党が50議席(無所属含む)を占める見通しです。法案などの賛否同数の場合、上院議長を兼務する副大統領(民主党のハリス上院議員が就任)が決裁票を投じるため、大統領と上下両院を民主党が主導する「トリプルブルー」(青色は民主党のシンボルカラー)が成立することになります。
民主党は財政調整措置により単独で法案可決が可能、増税と景気対策規模拡大が現実的に
トリプルブルーの成立は、バイデン次期米大統領の公約推進の後押しとなります(図表1)。具体的には、連邦法人税の引き上げ(21%から28%へ)や、富裕層への課税強化(所得税の最高税率を37.0%から39.6%へ)など、バイデン氏が公約に掲げる増税が現実味を帯びます。また、増税を財源とすることなどで、追加的な景気対策の規模拡大も進めやすくなります。
米国では、税制や、歳出の約3分の2を占める義務的経費(社会保障など)を変更する場合、恒久法の改正が必要となり、その際、「財政調整法」が重要な役割を果たします(図表2)。財政調整法による審議手法を「財政調整措置」といい、改正法を迅速に成立させるため、審議時間は20時間に制限され、上院での法案は全100議席中51議席の単純過半数で可決されます。そのため民主党は財政調整措置により単独で法案の可決が可能となります。
民主党勝利の報道に市場は財政拡大を織り込む反応、増税など懸念材料の影響はまだ限定的
1月6日の米国市場に目を向けると、民主党優勢の報道が伝わるなか、米10年国債利回りは上昇(価格は下落)し、2020年3月以来の1%台乗せとなりました。株式市場では、銀行などバリュー株が堅調に推移した一方、テクノロジーなどグロース株は軟調な動きとなりました。また、為替市場では、日本円、米ドルが対主要通貨で売られる展開となっています。
つまり、トリプルブルー成立の見通しに対する市場の初期反応は、「財政支出拡大」と「景気浮揚」を織り込むものだったといえます。なお市場では、増税について、実施の可能性は高まったものの、まずは景気配慮の政策が優先されるとの見方もあり、また、金融規制や環境規制などは共和党の支持が一定程度必要であるため、早期成立は容易ではないとの声も聞かれ、これら懸念材料の市場への影響は、今のところ限定的となっています。