米ジョージア州上院決選投票の注目ポイント
2021年1月4日
●上院の残り2議席はいずれもジョージア州の議席、1月5日の決選投票で上院の多数党が決まる。
●決選投票で民主党が2議席獲得ならば大統領と上下両院を民主党が主導するトリプルブルーに。
●市場にとって景気対策は好材料だが増税は懸念材料であり株価のある程度の調整はやむをえず。
上院の残り2議席はいずれもジョージア州の議席、1月5日の決選投票で上院の多数党が決まる
米国では2020年11月3日、大統領選と同時に米上院選が実施されました。選挙前の上院議席は、定員100議席のうち、共和党が53議席、民主党が47議席(無所属含む)を占めていましたが、選挙の結果、共和党は50議席(非改選30議席)、民主党は48議席(非改選35議席)を確保しました。残る2議席については、いずれもジョージア州の議席となっています。
ジョージア州の上院選では、改選を迎えた1議席と、引退した議員の補欠選挙の計2議席を巡って投票が行われましたが、いずれも過半数を獲得した候補者がいなかったため、それぞれ得票率1位と2位の候補者が、2021年1月5日の決選投票に臨むことになりました。改選1議席を争うのは、共和党のパーデュー上院議員と民主党候補のオソフ氏で、補欠選1議席を争うのは、共和党のロフラー上院議員と民主党候補のワーノック氏です(図表1)。
決選投票で民主党が2議席獲得ならば大統領と上下両院を民主党が主導するトリプルブルーに
米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の世論調査(2020年12月14日から27日までの平均)によれば、オソフ氏の支持率は49.3%と、パーデュー氏の支持率48.5%を0.8%ポイントの僅差で上回っています。また、同じ世論調査において、ワーノック氏の支持率は49.8%、ロフラー氏の支持率は48.0%となっており、ワーノック氏が1.8%ポイント上回っています。
支持率の差はわずかですが、仮に民主党候補2名が勝利すれば、民主党も共和党と同じく50議席を確保することになり、上院の採決で賛否が50対50となった場合は、上院議長を務める副大統領の一票で決まります。次期副大統領には民主党のハリス上院議員が就くため、ジョージア州の決選投票で民主党が2議席を獲得すれば、大統領と上下両院を民主党が主導する「トリプルブルー」(青色は民主党のシンボルカラー)となります。
市場にとって景気対策は好材料だが増税は懸念材料であり株価のある程度の調整はやむをえず
トリプルブルーとなれば、バイデン政権の政策運営上、大きな変化が予想されます(図表2)。例えば、上院での予算審議については、「財政調整法」に基づく審議により、民主党が過半数で法案を可決することができます。そのため、バイデン政権の財政政策(約1.4兆ドルの増税を財源に約2.5兆ドルの財政赤字拡大を加えた約4兆ドルの景気対策)が現実味を帯びます。
この景気対策により、2022年と2023年の米経済成長率は、2%ポイント程度押し上げられると推定されます。市場への影響を考えた場合、景気対策は好材料ではあるものの、増税は懸念材料です。米大統領選の結果、トリプルブルー回避(すなわち増税回避)の見通しとなったことで、米国株が上昇した経緯を踏まえると、トリプルブルーの実現により、増税の見通しが強まれば、株価のある程度の調整はやむをえないと思われます。