ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目日米経済対策のまとめ~過去発表分も含めた現状整理

日米経済対策のまとめ~過去発表分も含めた現状整理

2020年12月9日

●日本政府は今年度3回目の経済対策を決定、新規国債発行は初めて100兆円突破の見通し。
●これにより国内の経済成長率は一定程度上昇へ、一方、米国では追加経済対策の協議が難航。
●ムニューシン案も踏まえ協議は18日まで継続か、ただ日米追加経済対策は市場に織り込み済み。

日本政府は今年度3回目の経済対策を決定、新規国債発行は初めて100兆円突破の見通し

政府は12月8日、臨時閣議で追加経済対策を決定しました。事業規模は73.6兆円程度で、「新型コロナウイルス感染症の拡大防止策」に6兆円程度、「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現(デジタル化、グリーン投資など)」に51.7兆円程度、「防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保」に5.9兆円程度、「新型コロナウイルス感染症対策予備費の適時適切な執行」に10兆円程度があてられます。

事業規模73.6兆円のうち、財政支出が40兆円程度、残りは金融機関の融資などになります。財政支出の内訳は、国・地方の歳出が32.3兆円程度、財政投融資が7.7兆円程度です。また、国・地方の歳出は、国費が30.6兆円で、うち2020年度の第3次補正予算が20.1兆円(一般会計19.2兆円、特別会計1.0兆円)となっています(図表1)。今年度、3回目となる大型経済対策で、新規国債発行は初めて100兆円を超える見通しです。

これにより国内の経済成長率は一定程度上昇へ、一方、米国では追加経済対策の協議が難航

第3次補正予算は、2021年1月末頃に成立し、今年度内にも経済成長押し上げ効果の一部があらわれ始めると思われます。効果の大きさについては、第3次補正予算案の中身を確認する必要がありますが、弊社は現時点で、今回の追加経済対策により、2020年度の実質GDP成長率は0.2%ポイント程度、2021年度は0.7%ポイント程度、それぞれ押し上げられる可能性が高いとみています。

一方、米国に目を向けると、依然として追加経済対策を巡る与野党の協議が難航しています。超党派の議員は12月1日、失業給付の積み増しなどを含む9,080億ドル規模の追加経済対策案を発表しました。しかしながら、民主党は、共和党が重視するコロナ感染の賠償訴訟から企業などを守る免責条項に反対しており、共和党は、民主党が主張する州・地方政府への資金支援に反対しているため、両党の溝が埋まっていません。

ムニューシン案も踏まえ協議は18日まで継続か、ただ日米追加経済対策は市場に織り込み済み

こうしたなか、ムニューシン財務長官は12月8日、民主党のペロシ下院議長に9,160億ドル規模の新たな経済対策案を提示したと述べました。また、この案には、企業などを訴訟から守る免責条項と、州・地方政府への資金支援が盛り込まれていることも明らかにしました。与野党は、現行のつなぎ予算の期限である11日までに、改めて1週間のつなぎ予算を成立させ、18日を新たな期限として、本予算と追加経済対策の協議を継続する見通しです。

追加経済対策の規模は、超党派案でもムニューシン財務長官案でも、9,000億ドル程度で、当初の民主党案(2.2兆ドル規模)を大きく下回ります。ただ、これまで実施されてきた経済対策と比較すれば、まずまずの規模といえます(図表2)。なお、9,000億ドル程度の米追加経済対策の実施は市場に織り込み済みで、すでに閣議決定された日本の追加経済対策とともに、株価の一段の押し上げ効果は限定的とみています。