ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目米大統領選の結果が確定していないなかでの株高と円高について

米大統領選の結果が確定していないなかでの株高と円高について

2020年11月6日

●米大統領選の開票は続いているが、バイデン氏がアリゾナ州とネバダ州で勝利なら次期大統領に。
●日経平均は約29年ぶりの高値水準、トランプ氏の訴訟に警戒感なく上院共和党の見方も好感。
●やはり市場は「いいとこどり」の反応で慎重な姿勢が必要、ドル安円高はリスクオンのドル安の結果。

米大統領選の開票は続いているが、バイデン氏がアリゾナ州とネバダ州で勝利なら次期大統領に

米大統領選の開票はいまだ続いており、日本時間の11月6日午前8時時点において、結果はまだ確定していません。報道によると、選挙人の獲得数は、民主党のバイデン候補が253人、共和党のトランプ候補が214人となっています。バイデン氏はあと17人、トランプ氏はあと57人の選挙人を獲得すれば、過半数の270人(選挙人の総数は538人)に達し、勝利が確定します。

集計が終わっていないのは、ペンシルベニア州(選挙人の数は20人、以下数字のみ)、ジョージア州(16)、ノースカロライナ州(15)、アリゾナ州(11)、ネバダ州(6)、アラスカ州(3)の6州です。アラスカ州は歴史的に共和党が強い「レッドステート」ですので、残り5州の動向が注目されますが、バイデン氏が、優勢とされるアリゾナ州とネバダ州で勝利すれば、次期大統領となります。

日経平均は約29年ぶりの高値水準、トランプ氏の訴訟に警戒感なく上院共和党の見方も好感

一方、国内に目を向けると、日経平均株価が堅調に推移しています。本日前場の取引では、2018年10月2日終値の24,270円62銭を上回り、一時24,375円44銭まで上昇しました。このレベルは、1991年11月13日終値の24,416円23銭以来、約29年ぶりの高値水準です。米大統領選の結果が確定しておらず、また、バイデン大統領、上院共和党、下院民主党という見方が増えるなかで、株価が上昇する理由について、以下、考えてみます。

米大統領選挙後のリスクとして市場で意識されていたのは、トランプ氏が選挙の不正を訴えて、結果の確定が遅れることです。実際、トランプ陣営は11月4日、郵便投票の開票などをめぐり訴訟を起こしました。ただ、不正の根拠は示されず、市場に警戒感はみられません。また、上院共和党の見方が、民主党の政策に関する「増税」、「過度な財政支出」、「米巨大IT企業の分割」への懸念を和らげ、株高につながったとの声も多く聞かれます。

やはり市場は「いいとこどり」の反応で慎重な姿勢が必要、ドル安円高はリスクオンのドル安の結果

ただ、市場はバイデン氏の勝利と上下両院での民主党勝利、いわゆるトリプルブルーへの期待で、株高で反応していた経緯を踏まえると、やはり足元の動きは「いいとこどり」であるように思われます。なお、24,000円という水準は、2018年以降、日経平均にとって、かなり強い上値抵抗線になっています(図表1)。米大統領選の結果もまだ確定していないことから、ここからは少し慎重な姿勢が求められます。

なお、ドル円は昨日の海外市場で、1ドル=103円台までドル安・円高が進行しました。ただ、これは「株高を伴うリスクオン(選好)のドル安」であり、「株安を伴うリスクオフ(回避)の円高」ではありません(図表2)。このところ、為替市場はドル中心に動いており、リスクオンでドル安(ドル円はドル安・円高)、リスクオフでドル高(ドル円はドル高・円安)となるため、リスクの解釈はドルを起点に考える必要があります。