ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目米大統領選における州別選挙人の数と激戦州の動向

米大統領選における州別選挙人の数と激戦州の動向

2020年10月28日

●米大統領選では選挙人制度が採用され、選挙人の過半数270人以上を獲得した候補が勝利。
●バイデン氏が追い上げるテキサス州やスイングステートのフロリダ州、そしてラストベルトの州に要注目。
●コーンベルトはトランプ氏の農業政策への評価が焦点、選挙当日はこれら激戦州の動向がカギに。

米大統領選では選挙人制度が採用され、選挙人の過半数270人以上を獲得した候補が勝利

米大統領選では「選挙人制度」が採用されており、各州には人口に応じて「選挙人」が割り当てられます。ほとんどの州で、最も多くの票を獲得した候補が、その州の選挙人全員を獲得する「勝者総取り」方式を採用しており、得票率で選挙人を配分する州は、ネブラスカ州とメーン州の2州のみです。したがって、選挙人が多い州で勝利すれば、選挙に有利となります。

選挙人の総数は538人で、このうち過半数の270人以上を獲得した候補が当選となり、2021年1月に大統領に就任します。全米50州について、各州に割り当てられた選挙人の数は図表1の通りです。大票田のカリフォルニア州(55人)、テキサス州(38人)、フロリダ州(29人)、ニューヨーク州(29人)の後に、イリノイ州(20人)、ペンシルベニア州(20人)が続きます。

バイデン氏が追い上げるテキサス州やスイングステートのフロリダ州、そしてラストベルトの州に要注目

ほとんどの州は、伝統的に支持する政党が決まっています。例えば、カリフォルニア州とニューヨーク州は、民主党の牙城とされ、テキサス州は共和党の牙城とされます。そのため、これらの州の注目度は通常、それほど高くありませんが、最近の世論調査では、テキサス州でバイデン候補の支持率が伸びています。仮にトランプ候補が、テキサス州の選挙人38人を獲得できなかったとすれば、敗退は決定的となります。

大統領選で注目度が高いのは、民主・共和両党の間で支持が揺れる州、いわゆる「スイングステート」と呼ばれる激戦州です。代表的なのは、選挙人29人を抱えるフロリダ州で、世論調査ではこれまでバイデン氏優勢でしたが、直近ではトランプ氏の支持率がバイデン氏を上回ってきています(図表2)。また、今回は、2016年の大統領選でトランプ氏の勝利を決定づけた「ラストベルト(さびついた工業地帯)」の州に注目が集まっています。

コーンベルトはトランプ氏の農業政策への評価が焦点、選挙当日はこれら激戦州の動向がカギに

ラストベルトとは、米国中西部から北東部に位置する、鉄鋼や石炭、自動車などの主要産業が衰退した工業地帯の呼称で、ペンシルベニア州、オハイオ州、ミシガン州、ウィスコンシン州などが含まれます。2016年の大統領選で、トランプ氏はこの4州で勝利しましたが、2018年の中間選挙での上院選で、共和党は民主党に敗北しています。また、直近の世論調査では、4州のうちトランプ氏が優勢なのはオハイオ州のみです。

トランプ氏がラストベルトで苦戦を強いられる見通しのなか、トウモロコシ生産が活発な中西部の「コーンベルト」と呼ばれる地域も注目されています。コーンベルトに含まれる、ミネソタ州やアイオワ州などが、トランプ氏の農産物輸出拡大策をどう評価するかがみどころです。11月3日の大統領選では、選挙結果のカギを握る、これら激戦州の動向が極めて重要となります。