動かぬドル円を動かす材料を考える

2020年10月13日

●コロナ・ショックで春先乱高下したドル円だが、政策効果で相場が落ち着き、最近は膠着感が強い。
●米大統領選の結果判明遅延ならドル安・円高、ただ101円台を大きく超える展開は見込み難い。
●選挙で不透明感払拭ならドル高・円安だが米長期金利上昇は限定的とみられ110円台は遠い。

コロナ・ショックで春先乱高下したドル円だが、政策効果で相場が落ち着き、最近は膠着感が強い

ドル円相場について、年初から足元までの動きを振り返ってみると、1月1日は1ドル=108円61銭付近で取引が始まり、しばらくドル高・円安の流れが続きました。2月20日には、一時112円23銭水準をつけたものの、直後にコロナ・ショックが発生し、リスクオフ(回避)の円買いが強まると、3月9日には101円19銭水準まで一気にドル安・円高が進行しました。

その後、リスクオフの度合いが増し、基軸通貨である米ドルを選好する動きが急速に強まると、ドル円はドル高・円安方向に反転、3月24日には111円71銭水準をつけました。ただ、多くの国々で、積極的な金融・財政政策が実施されたことから、金融市場は4月以降、次第に落ち着きを取り戻しました。ドル円も、ここ3カ月の値幅は3円50銭程度にとどまっており、やや膠着感が強まっています。

米大統領選の結果判明遅延ならドル安・円高、ただ101円台を大きく超える展開は見込み難い

膠着感が強まったことで、ドル円は2月20日につけた112円23銭水準と3月9日につけた101円19銭水準を起点とする「三角保ち合い(さんかくもちあい)」を形成しています(図表1)。テクニカル分析によれば、ドル円が三角形の頂点付近で下値支持線を下抜けるとドル安・円高方向の動きが加速し、上値抵抗線を上抜けるとドル高・円安方向の動きが加速すると解釈されます。

ドル円は年内にも三角形の頂点付近には到達するため、時期的に米大統領選挙を機に、下値支持線の下抜け、あるいは上値抵抗線の上抜けが予想されます。下抜け(ドル安・円高)の材料としては、選挙結果の判明が大幅に遅れることなどが考えられますが、この場合、米ドルも買われやすくなることや、大統領はいずれ決まることを踏まえると、3月9日につけた101円19銭水準を超える大幅なドル安・円高の進行は見込み難いと考えます。

選挙で不透明感払拭ならドル高・円安だが米長期金利上昇は限定的とみられ110円台は遠い

一方、選挙結果が比較的早い段階で判明すれば、政局の不透明感が払拭され、上抜け(ドル高・円安)の材料となる公算が大きいと思われます。また、米追加経済対策が決まらないまま選挙を迎え、バイデン氏が勝利し、上下院とも民主党が多数議席を占めるという結果になれば、経済対策の規模(民主党案の2.2兆ドル)への期待から、これも上抜け材料になるとみています。

このケースでは、米国において株高と長期金利上昇が見込まれますが、市場は米金融当局によるゼロ金利政策の長期化(図表2)を織り込んでいるため、米長期金利の上昇は限定的となり、ドル円は110円台の回復も容易ではないと考えています。したがって、ドル円相場が年内に三角保ち合いを上下いずれの方向に抜けたとしても、年初来の値幅(101円19銭水準〜112円23銭水準)内におさまる可能性が高いと予想しています。