米大統領選挙と株式市場のアノマリー
2020年8月13日
●民主党は副大統領候補にハリス氏を起用、株式市場はこの先、選挙動向を強く意識する展開に。
●4年の任期中にダウ平均が上昇する確率は、民主党大統領の方が共和党大統領よりもやや高い。
●大統領の出身政党が変わるか否かで、ダウ平均の騰落方向は選挙年と翌年で異なる傾向がある。
民主党は副大統領候補にハリス氏を起用、株式市場はこの先、選挙動向を強く意識する展開に
2020年11月3日に投開票が予定されている米大統領選挙まで3カ月を切りました。こうしたなか、民主党の大統領選候補に内定しているバイデン前副大統領は8月11日、副大統領候補にカマラ・ハリス上院議員を選んだと発表しました。ハリス氏はジャマイカ系の父親とインド系の母親を持ち、バイデン氏が大統領選で勝利すれば、女性で初の副大統領となります。
ハリス氏の政策スタンスはリベラル寄りですが、産業規制は強く主張しておらず、また、関税政策には反対の立場であることから、市場にあまり警戒感はないように思われます。ただ、株式市場は今後、米大統領選挙の動向を一段と材料視するようになるとみられるため、今回のレポートでは、選挙によって株式市場はどのように動く傾向があるのか、過去のデータで検証します。
4年の任期中にダウ平均が上昇する確率は、民主党大統領の方が共和党大統領よりもやや高い
図表1は、マッキンリー大統領Ⅰ期からトランプ大統領Ⅰ期までについて、任期中の各年(1年目は大統領選挙の翌年、2年目は中間選挙、3年目は大統領選挙の前年、4年目は大統領選挙の年)および任期4年通年のダウ工業株30種平均の騰落率を示したものです。なお、トランプ大統領Ⅰ期の4年目は2020年ですので、ダウ平均の騰落率は2019年12月31日から8月12日までの期間で計算しています。
全31回のうち、共和党大統領は17回、民主党大統領は14回ありました。それぞれ任期4年通年でダウ平均の騰落率をみると、共和党大統領の場合、上昇確率は70.6%、下落確率は29.4%です。一方、民主党大統領の場合は、上昇確率が78.6%、下落確率は21.4%となり、民主党大統領の方が、4年の任期中にダウ平均が上昇する確率は、やや高い傾向にあるといえます。
大統領の出身政党が変わるか否かで、ダウ平均の騰落方向は選挙年と翌年で異なる傾向がある
なお、マッキンリー大統領Ⅱ期以降の30回のうち、大統領の出身政党が変わらなかった18回(確率60.0%)において、前大統領の任期4年目と新大統領の任期1年目で株価の騰落方向が変わったのは8回(同44.4%)、変わらなかったのは10回(同55.6%)でした。また、出身政党が変わった12回(確率40.0%)において、株価の騰落方向が変わったのは9回(同75.0%)、変わらなかったのは3回(同25.0%)でした。
これらは論理的に説明のつかない変則性(アノマリー)のため、参考程度となりますが、今回のケースで考えれば、トランプ氏再選の場合、年末のダウ平均が昨年末の28,538ドル44セントを上回って終了すれば、来年1年ダウ平均は上昇し、下回って終了すれば下落する確率が高いということになります。また、バイデン氏勝利の場合は、上回って終了すれば来年は下落し、下回って終了すれば来年は上昇する確率が高いということになります。