対中強硬姿勢強化でも米株は堅調
2020年8月11日
●米国は8月に入り中国企業の締め出しや香港政府要人への経済制裁など対中強硬姿勢を強化。
●中国政府は報復へ、ただ米中対立下でも米国株は企業決算の無難な消化などから堅調に推移。
●米中対立は依然リスクであり、コロナの収束も程遠いことから、上値追いには慎重な姿勢が必要に。
米国は8月に入り中国企業の締め出しや香港政府要人への経済制裁など対中強硬姿勢を強化
トランプ米政権は8月に入り、対中強硬姿勢を一段と強めています(図表1)。米国務省は5日、個人や企業の情報を保護するため、通信キャリアやアプリストアなどの5分野から中国企業の排除を目指す、新たな指針を発表しました。そして、トランプ米大統領は翌6日、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」と対話アプリ「微信(ウィーチャット)」を運営する中国の2企業との取引を、45日後から禁止する大統領令に署名しました。
また、米財務省などの作業部会は6日、米上場の中国企業の監査状況を厳しく検査するよう、米証券取引委員会(SEC)にルール改正を求める報告書を公表しました。SECはこれを受け、2022年1月までに基準を満たさなかった中国企業を上場廃止とする規定を導入する方針です。さらにトランプ米政権は7日、香港の自治侵害などを理由に、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官ら11人に制裁を科すと発表しました。
中国政府は報復へ、ただ米中対立下でも米国株は企業決算の無難な消化などから堅調に推移
米国による中国企業の締め出しの動きに対し、ティックトックを運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)は7日の声明で提訴の可能性を示しました。また、中国政府は10日、トランプ米政権がキャリー・ラム行政長官らに制裁を科したことへの対抗措置として、対中強硬派として知られる米共和党のマルコ・ルビオ上院議員ら11人を制裁対象にしたと発表するなど、米中両国の激しい対立が続いています。
しかしながら、こうしたなかでも、米国株は堅調に推移しており、ダウ工業株30種平均は、7月31日から8月10日までの期間で、約5.2%上昇しています。背景には、①4-6月期の米企業決算が無難に消化されたこと、②8月に入って公表された7月分の米経済指標(ISM製造業景況感指数など)が比較的良好であったこと、③米経済対策への期待が根強いこと、などがあると思われます。
米中対立は依然リスクであり、コロナの収束も程遠いことから、上値追いには慎重な姿勢が必要に
米企業決算について、調査会社リフィニティブによると、8月10日時点で米主要500社のうち、448社が4-6月期の決算発表を終了しました。1株あたり利益は前年同期比で約34%減ですが、8割強の企業が予想を上回る結果を公表しています(図表2)。また、経済対策第4弾の与野党協議が難航していることを受け、トランプ米大統領は8日、失業給付の上乗せなどを盛り込んだ追加対策を大統領令で発動しました。
このように、足元でみられる米企業や米経済に関する好材料が、米中対立への懸念を和らげ、米株の堅調推移につながっていると推測されますが、これは日本株にも追い風です。もちろん、米中対立は、今後エスカレートするリスクが残っており、また、新型コロナウイルスもまだ世界的に収束は程遠い状況です。そのため、米国株の上値を追うには、慎重な姿勢を維持する必要があると考えます。