IMFは世界経済の見通しを下方修正

2020年6月25日

●IMFは世界経済見通しを下方修正、2020年は前年比-4.9%、2021年は同+5.4%を予測。
●2020年は日米欧などの先進主要国や中南米の主要国、また産油国で景気後退が見込まれる。
●感染第2波が世界経済や金融市場を左右、目先は米国の感染者数動向に十分な注意が必要。

IMFは世界経済見通しを下方修正、2020年は前年比-4.9%、2021年は同+5.4%を予測

国際通貨基金(IMF)は6月24日、世界経済見通しを改定しました。2020年の世界経済の成長率見通しは、前回4月時点から1.9%ポイント下方修正され、前年比-4.9%となりました(図表1)。大半の国について消費の伸びが下方修正され、2020年は深刻な景気後退に陥るとの見方が示されました。IMFによるベースライン予測は、世界の経済活動は2020年第2四半期に底を打ち、その後回復に向かうというものです。

このベースライン予測に基づき、2021年の世界経済の成長率は、前年比+5.4%へ上昇するとの見通しが示されましたが、これは4月時点から0.4%ポイント下方修正された水準となります。なお、IMFは、2021年初めに感染第2波が発生するリスクシナリオも検証しています。このリスクシナリオが実現した場合、前年比+5.4%を見込んでいた2021年の世界経済の成長率は、前年比で4.9%下振れし、同年の成長率はほぼゼロとなります。

2020年は日米欧などの先進主要国や中南米の主要国、また産油国で景気後退が見込まれる

先進諸国の経済成長率見通しについては、2020年が前年比-8.0%(4月時点から1.9%ポイント下方修正)となり、米国や日本、英国、ドイツなどで景気後退が見込まれています。2021年には同+4.8%に回復する見通しですが、GDPの水準としては、2019年を約4%下回ったままとなります。なお、米国と日本の経済成長率見通しは、2020年、2021年ともに下方修正されています。

新興諸国の経済成長率見通しについては、2020年が前年比-3.0%(4月時点から2.0%ポイント下方修正)となりました。中国では、すでに景気回復が進みつつあり、2020年は同+1.0%の成長が予想されています。一方、ブラジルやメキシコ、ロシアやサウジアラビアなどは深い景気後退に陥るとみられます。ただ、2021年の新興諸国の経済成長率は、主に中国の景気回復(2021年は同+8.2%の予測)を反映し、同+5.9%まで持ち直す見通しです。

感染第2波が世界経済や金融市場を左右、目先は米国の感染者数動向に十分な注意が必要

今回のIMFによる世界経済見通しの下方修正については、ある程度、市場でも予想されていた範囲内だったと思われます。また、世界の経済活動が2020年第2四半期に底を打ち、その後回復に向かうがペースは緩やか、というのも、大方、市場で想定されているシナリオと考えます。したがって、この先、世界経済や金融市場を左右するのは、やはり「新型コロナウイルスの感染第2波の動き」、ということになります。

6月24日付レポート「リスク要因の検証~コロナ感染動向や米中関係など」で、米国の感染者数動向は、予断を許さない状況と述べましたが、同日、米フロリダ州、カリフォルニア州、テキサス州で、新規感染者数がそれぞれ、5,508人、7,149人、5,551人となり、過去最多を更新しました。感染拡大が他の州に広がれば、米国経済の下押し圧力となり、金融市場に動揺が広がる恐れもあるため、目先は米国の感染動向に十分な注意が必要です。