ウィズコロナ時代の日本株投資戦略

2020年5月14日

●経済活動の再開後も本格回復は望みにくく、ウイルスと共存する、「ウィズコロナ」の想定が必要に。
●ウィズコロナ時代は数年間続くことも予想され、航空や鉄道などへの影響が長期化する恐れもある。
●非接触、非対面の社会は5G関連企業の追い風に、また幅広い業種での業界再編も予想される。

経済活動の再開後も本格回復は望みにくく、ウイルスと共存する、「ウィズコロナ」の想定が必要に

株式市場では、多くの国々が経済活動を段階的に再開させていることを受け、世界経済は4-6月期に最悪期を脱し、7-9月期には上向きに転じるとの期待が広がっているように見受けられます。しかしながら、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は5月12日、経済活動の再開を急げば、制御できない感染の急拡大を引き起こすリスクがあると警告しました。

実際、5月6日に行動制限を大幅に緩和した韓国では、すでに集団感染が発生し、また、4月8日にロックダウン(都市封鎖)が解除された中国湖北省武漢市では、先週末に新たなウイルス感染者がみつかり、全市民がPCR検査を受けることになりました。これらを踏まえると、経済活動が再開しても、本格的な景気回復は望みにくく、新型コロナウイルスと長期にわたって共存する「ウィズコロナ」時代を想定しておく必要があると思われます。

ウィズコロナ時代は数年間続くことも予想され、航空や鉄道などへの影響が長期化する恐れもある

世界保健機関(WHO)は4月、新型ウイルスのワクチン開発について、少なくとも1年はかかるとの見解を表明しました。そのため、開発に時間がかかれば、ウィズコロナ時代は数年続くことも十分考えられます。この間、行動制限が一定程度残ることで、経済活動はオンライン化が進むことが予想されます。そのため、株式市場では「非接触」や「非対面」が今後の投資テーマとして、より注目される可能性が高いと思われます。

そこで、今後予想される社会変化とその影響について、主な業種別に考えてみます(図表1)。行動制限が一定程度残る間は、航空や鉄道の利用者数の低迷は続く見通しで、旅行・ホテル業界やレジャー施設、百貨店や外食産業への影響も長引くリスクがあります。また、経済環境が一段の低成長、低インフレ、低金利となれば、景気敏感な自動車や銀行のほか、素材・エネルギー産業(鉄鋼、非鉄金属、化学、石油など)にも強い向かい風となります。

非接触、非対面の社会は5G関連企業の追い風に、また幅広い業種での業界再編も予想される

一方、非接触や非対面という概念が社会に浸透する過程において、幅広い業種で対面による営業や接客の機会が減少し、ビジネスではテレワーク、医療では遠隔診療、教育では遠隔授業の普及に弾みがつき、電子決済やインターネット通販での食品・日用品などの購入が、一般的になると思われます。また、小売業でも最近、一部の百貨店などが試験的にVR(仮想現実)空間に店舗を出店する動きもみられます。

このような変化のカギを握るのが次世代移動通信技術「5G」です。追い風となる業種は情報・通信業で、半導体製造装置や電子部品メーカーも恩恵を受けると考えます。前述の自動車には自動運転技術の開発、銀行にはIT(情報技術)と金融を融合したフィンテックの活用、多くの製造業にはAI(人工知能)を取り入れたスマートファクトリーへの移行という商機があります。なお、ウィズコロナ時代は競争激化で幅広い業種で業界再編が予想されます。