日銀は企業の資金繰り支援を強化し銀行にも配慮
2020年4月28日
●日銀はCP・社債等の買い入れ増額、企業金融支援オペ拡充、積極的な国債買い入れを決定。
●日銀は企業融資を行う銀行に対し原資を供給し、マイナス金利が適用されないように配慮を行う。
●国債買い入れは80兆円のめど撤廃も従来の通りの対応、また企業支援の速度は金融機関次第。
日銀はCP・社債等の買い入れ増額、企業金融支援オペ拡充、積極的な国債買い入れを決定
日銀は4月27日の金融政策決定会合で、金融緩和の強化を決定しました。具体的には、CP・社債等の買い入れ増額、3月に新規導入した企業金融支援オペの拡充、国債のさらなる積極的な買い入れ、が柱となります。今回、CP等、社債等の追加買い入れ枠は、それぞれ3月に設定した1兆円から7.5兆円に増額されました。その結果、買い入れ残高の上限は、既存の買い入れ残高と合わせると、約20兆円に達します(図表1)。
3月に新規導入した「新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペ」は今回、「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ」に改称され、対象担保には、民間企業債務のみならず、家計債務が含まれることになりました。さらに、オペの対象先に中小企業の融資窓口となる信用組合などが加わり、また、日銀当座預金では、オペの利用残高に相当する金額に0.1%が付利されることが決定されました(図表2)。
日銀は企業融資を行う銀行に対し原資を供給し、マイナス金利が適用されないように配慮を行う
このほか、日銀は中小企業などの資金繰りをさらに支援するため、政府の緊急経済対策に連動した、金融機関への新たな資金供給手段の検討を開始しました。これは、金融機関が信用保証料や利子の減免制度を利用して行う貸出に対し資金を供給するもので、貸付利率はゼロ%です。金融機関がこれを利用した場合、日銀当座預金で、利用残高の2倍の金額がマクロ加算額に加算(ゼロ%が適用)され、同時に利用残高相当額に0.1%が付利されます。
一般に、銀行が企業に融資を行う場合、融資資金は企業の当座預金に入金されます。銀行にとって、融資増は預金増となるため、日銀当座預金の増加要因となり、増加分にマイナス金利が適用されることがあります。そのため日銀は、前述の特別オペや、今回新たに検討する資金供給制度を積極的に利用する銀行に対しては、マイナス金利が適用されないよう、マクロ加算残高への加算によるゼロ%適用や、0.1%付利などの配慮をしています。
国債買い入れは80兆円のめど撤廃も従来の通りの対応、また企業支援の速度は金融機関次第
また、日銀は国債の買い入れについて、「保有残高の増加額年間約80兆円」のめどを撤廃し、国債を制限なく購入する姿勢を示しました。ただ、現在の日銀の操作対象は、長短金利であり、量ではありません。そのため、国債の買い入れ額は、長期金利の水準(10年国債利回りゼロ%程度)を維持するため、必要であれば増やし、必要でなければ増やさないという、これまで通りの受身的な対応が維持される見通しです。
今回の決定内容から、日銀が企業の資金繰り支援の強化に努め、銀行にも配慮している様子がうかがえます。ただ、中小企業に資金が迅速に行き渡るか否かは金融機関にかかっています。米国では米連邦準備制度理事会(FRB)が特別目的事業体(SPV)を通じ、金融機関から中小企業向け融資額の95%を買い取り、素早く資金需要に対応していますが、日本では政府系金融機関が多く、日銀は米国型の制度までは不要と判断しているように思われます。