ドル円は111円台を回復~今後の方向性を考える
2020年2月20日
●ドル円は111円台を回復、リスクオンにおける円売り・ドル売りの関係が崩れ、円全面安の展開に。
●ただアジア通貨などは対米ドルでまちまちの動き、新型肺炎の懸念後退を理由とした反応ではない。
●円安は日銀の追加緩和期待が背景か、110~115円のレンジ定着を試すも期待剥落に要注意。
ドル円は111円台を回復、リスクオンにおける円売り・ドル売りの関係が崩れ、円全面安の展開に
ドル円は、2月19日の東京外国為替市場で1ドル=110円台を回復し、欧州時間に入ってからも、ドル高・円安の流れが継続しました。ニューヨーク外国為替市場では、米主要株価指数がそろって上昇したことなどを背景に、ドル円は一気に111円台をつける展開となりました。その後もドル買い・円売りが続き、一時111円59銭水準までドル高・円安が進行しました。
これまで、リスクオフ(回避)の局面では、日本円や米ドルが買われやすく、リスクオン(選好)の局面では、日本円や米ドルが売られやすかったため、結果的にドル円の為替レートは小動きとなるケースが多くみられました。しかしながら、19日の主要通貨の動きを確認すると、日本円がほぼ全面安となる一方、米ドルは日本円ほど売られておらず、従来の連動性が途切れていることが分かります(図表1)。
ただアジア通貨などは対米ドルでまちまちの動き、新型肺炎の懸念後退を理由とした反応ではない
各通貨の動きについて、もう少し詳しくみていきます。対米ドルで上昇率が大きい通貨は、ノルウェークローネ、ロシアルーブル、カナダドルです。これらは、いわゆる原油関連通貨で、足元の原油相場の戻り基調が、対米ドルでの上昇につながっていると推測されます。しかしながら、その他の欧州通貨や、アジア・オセアニア通貨は、まちまちの動きとなっています。
具体的には、英ポンドや中国人民元(中国本土外で取引されるオフショア人民元)、オーストラリアドルは対米ドルで下落し、ユーロやタイバーツ、フィリピンペソは上昇しました。為替市場が、新型肺炎の感染拡大に対する懸念は後退したと判断するならば、これらの通貨はそろって対米ドルで上昇すると思われます。ただ、実際にそうなっていないことを踏まえると、昨日は感染拡大の懸念後退を理由に、相場が反応した訳ではないと考えられます。
円安は日銀の追加緩和期待が背景か、110~115円のレンジ定着を試すも期待剥落に要注意
19日の為替市場では、少なくとも「日本円を売る」ことが、焦点だったと思われます。そこで、改めて最近の日本に関する材料に目を向けると、2019年10-12月期の実質GDPや2019年12月の機械受注など、このところ市場予想を下回る弱い経済指標が相次いでおり、また、日本国内でも新型肺炎の感染者数が増加しているなど、景気の先行きに不安を抱かせるものが目立ちます。
したがって、19日の円全面安は、「日銀の追加緩和期待」が、いくらか背景にあった可能性が高いと考えます。ドル円は現在、下値支持線と上値抵抗線からなる「三角保ち合い(もちあい)」を形成していますが(図表2)、今週、上値抵抗線をしっかりと上抜ければ、110円~115円のレンジ定着の可能性が高まります。ただ、追加緩和期待が剥落した場合、急速な円高方向の戻りも起こり得ますので、今しばらくは警戒が必要です。