一歩先行く相場の目線
2020年2月7日
●主要株価指数はここ数日で急反発、米国では良好な企業決算でダウなどが過去最高値を更新。
●相場は常に一歩先をみて動くため、新型肺炎への懸念が残ったままで株価が戻るのはよくあること。
●相場の目線は、すでに企業の生産再開や各国の対応策に、次の目線は早々に米大統領選挙か。
主要株価指数はここ数日で急反発、米国では良好な企業決算でダウなどが過去最高値を更新
主要国の株価指数は、新型肺炎の感染拡大を受け、軟調な推移が続いていましたが、ここ数日は、反発の動きが確認されるようになりました(図表1)。日経平均株価は、2月6日の上げ幅が一時600円を超え、節目の24,000円に迫る場面もみられました。米国では同日、ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数が、そろって過去最高値を更新しました。
主要株価指数が戻りを試すなか、米国株の強さが突出していますが、背景にあるのは、良好な企業決算です。6日に上昇が目立った銘柄には、先般の決算発表でクラウドビジネスが好調だったアマゾンやマイクロソフト、同じく決算発表で主力のiPhoneに加えApple Watchなどの売上高も増加したアップル、また、グーグルの持ち株会社アルファベットなどもあります。
相場は常に一歩先をみて動くため、新型肺炎への懸念が残ったままで株価が戻るのはよくあること
それでも、新型肺炎の感染拡大が続いている状況で、株価が上昇しているため、これをどう解釈してよいか、判断に悩む投資家も多いと思います。そこで改めて、相場の基本的な性質を考えてみます。相場は常に「一歩先をみて動く」傾向があります。また、そもそも、個別の材料に対し、「熱しやすく冷めやすい」傾向もあります。そのため、今回のように、新型肺炎への懸念が残るうちに株価が戻ってしまうのは、よくあることです。
それでは次に、相場の目線は今どこに向けられているか、推測してみます。相場の目線は、すでに新型肺炎そのものにはなく、むしろ、中国企業や海外の中国進出企業などの「休業後の生産再開」に向けられていると考えられます。生産量は、休業で減少するものの、休業後に急増するため、ならしてみれば、減少は一時的な影響にとどまります。今回は、生産設備が物理的に損壊した訳ではありません。
相場の目線は、すでに企業の生産再開や各国の対応策に、次の目線は早々に米大統領選挙か
また、もう1つ、相場の目線が向けられていると思われるのは、利下げなど、各国による必要に応じた「対応策」です。新型肺炎の感染拡大で、ある国の経済に悪影響が及ぶ状況となれば、その国は、緩和的な金融政策や拡張的な財政政策の実施を検討することになります。実際、中国人民銀行は2月3日、金融市場に1兆2,000億元の流動性を供給し、また、タイ中央銀行は5日、フィリピン中央銀行は6日、それぞれ利下げを決定しました(図表2)。
このように、相場の目線は、企業の生産再開や、各国の対応策に向けられ、これが株価のポジティブな反応につながっていると推測されます。もちろん、新型肺炎について、この先、想定されていないような病状が発症する状況となれば、市場の警戒感は再び強まることになると思われます。そうでない限り、相場の次なる目線は、早々に「米大統領選挙」に向けられるとみています。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。