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2020年FOMCメンバーの金融政策スタンス

2020年1月30日

●金融政策を議論し決定するFOMCでは7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を持っている。
●2020年に投票権を持つFOMCメンバーの多くは中立姿勢で、金融政策は当面現状維持を予想。
●今年最初のFOMCは無風通過、米長期金利低下の反応は単に新型肺炎を警戒した動きとみる。

金融政策を議論し決定するFOMCでは7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を持っている

米国の連邦準備制度(The Federal Reserve System)は、1913年の連邦準備法によって設立された中央銀行制度です。その最高意思決定機関が、ワシントンにある連邦準備制度理事会(The Board of Governors of the Federal Reserve System)で、一般的にFRB(The Federal Reserve Board)という略称で呼ばれています。FRBは連邦政府の1機関であり、7名の理事(うち議長1名、副議長1名)で構成されています。

FRBは、その下に12の地区連邦準備銀行(地区連銀)を抱え、業務に関する広範な監督権限を付与されています。なお、金融政策の決定に関する議論は、連邦公開市場委員会(FOMC)で行われ、7名の理事(現在2名空席)と5名の地区連銀総裁が投票権を持ちます。理事とニューヨーク地区連銀総裁は常任ですが、4名の地区連銀総裁は輪番制により1年の任期となります。

2020年に投票権を持つFOMCメンバーの多くは中立姿勢で、金融政策は当面現状維持を予想

つまり、投票権を持つ5名の地区連銀総裁のうち、ニューヨーク地区連銀総裁を除き、4名が毎年入れ替わることになります。2019年は、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティの各地区連銀総裁がメンバーでした。2020年は、クリーブランド、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリスの各地区連銀総裁が、新たに投票権を持つメンバーとなります。そこで以下、この4名の金融政策スタンスを確認します。

弊社では、クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、物価を重視する「タカ派」、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は、景気を重視する「ハト派」とみています(図表1)。そして、フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁と、ダラス地区連銀のカプラン総裁は、「中立」と考えています。なお、常任メンバーの金融政策スタンスは全員「中立」とみられ、これを踏まえると、2020年の金融政策は当面現状維持の可能性が高いと思われます。

今年最初のFOMCは無風通過、米長期金利低下の反応は単に新型肺炎を警戒した動きとみる

新メンバーによる最初のFOMCが、2020年1月28日、29日に開催され、大方の予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は年1.50%~1.75%で据え置かれました。FOMC声明では、家計支出の表現が、「力強いペースで拡大」から「緩やかなペースで拡大」に下方修正され、また、「現在の政策スタンスは物価上昇率が2%前後近くで推移するのを支えるために適切」という文言は、「2%前後に戻るのを支えるために適切」と、一部修正されました。

これに加え、パウエルFRB議長が記者会見で、新型肺炎の影響は不確実性が大きいとし、また、2%以下の物価上昇率が長く続くことは好ましくないと述べたことで、市場では米利下げの織り込みが進み、米長期金利は低下しました(図表2)。ただ、今回のFOMCからは、早期利下げのメッセージは読み取れず、これらは、単に新型肺炎の感染拡大を警戒した動きと思われます。前述の通り、FOMCの新メンバーはしばらく先行きを見守り、政策金利を当面据え置くと予想します。