米国の対中制裁関税第4弾に関する考察
2019年8月5日
●トランプ米大統領は閣僚級の米中貿易協議後の8月1日、対中制裁関税第4弾の発動を表明。
●第4弾発動ならば、世界経済の成長率は更に0.3%程度低下し、米利下げは9月以降も継続へ。
●市場は発動を想定、ドル円は104円87銭水準を意識し、日経平均は20,000円が下値目途か。
トランプ米大統領は閣僚級の米中貿易協議後の8月1日、対中制裁関税第4弾の発動を表明
トランプ米大統領は8月1日、3,000億ドル分の中国製品に対し、9月1日から10%の追加関税を課すとツイートし、対中制裁関税第4弾の発動を表明しました(図表1)。米中両首脳は、6月29日に大阪で会談し、トランプ米大統領はその後の記者会見において、対中制裁関税第4弾の発動は当面見送ると述べていました。しかしながら、その方針は早々に転換される可能性が高まりました。
なお、先週は7月30日、31日に、閣僚級の米中貿易協議が上海で開催されました。報道によれば、中国による米国産農産物の輸入拡大や、米国による中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の制裁緩和について、話し合いが行われた模様です。しかしながら、協議は5時間程度で終了し、進展はみられませんでした。トランプ米大統領は、この状況に業を煮やし、今回の決断に至ったものと推測されます。
第4弾発動ならば、世界経済の成長率は更に0.3%程度低下し、米利下げは9月以降も継続へ
対中制裁関税第4弾の発動が予定されている9月1日まで、まだ1カ月程度、時間があります。この間、農産物問題やファーウェイ問題について、一定の進展がみられれば、第4弾の発動は延期される公算が大きくなります。今後、米中両国は、8月に実務者レベルの協議を行い、9月に再び閣僚級の協議を行う予定とみられますが、今回のトランプ米大統領のコメントを受けた中国側の動きが注目されます。
ただ、中国は米国の脅しには屈しないとの立場であるため、すぐに米国に譲歩することは想定し難いと思われます。仮に制裁関税第4弾が9月1日に発動された場合、世界経済の成長率は、来年にかけて、更に0.3%程度下押され、景況感の底入れは、年末もしくは年明けにずれ込むことが予想されます。また、米国の利下げについて、年内は9月と12月、来年は1-3月期に、それぞれ0.25%ずつ、実施される可能性が高まると考えます。
市場は発動を想定、ドル円は104円87銭水準を意識し、日経平均は20,000円が下値目途か
なお、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が見込む、来年にかけての利下げ回数は、米連邦公開市場委員会(FOMC)前よりも増えています(図表2)。金融市場は当面、対中制裁関税第4弾の発動を織り込む動きが続くとみられ、具体的には、主要国で長期金利の低下が一段と進み、株式市場の軟調な地合いが強まり、また、為替は円やスイスフランなどが対主要通貨で買われやすくなると予想します。
なお、本日8月5日、人民元が防衛ラインとみられていた、1ドル=7元の水準を超えて下落し、中国の資本流出懸念が市場に広がっています。ドル円はすでに、節目の1ドル=105円や、年初の1月3日につけた104円87銭水準が意識されつつあり、日経平均株価については、株価純資産倍率(PBR)1倍の水準である20,000円程度が下値の目途と考えられます。円相場、日本株とも、しばらくは米中対立の行方をにらみ、神経質な動きが続くと思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。