参院選の結果と日本株への影響
2019年7月22日
●今回の参院選で与党は改選過半数を獲得も、改憲勢力は改憲発議に必要な3分の2に届かず。
●参院選の日本株への影響は限定的、注目は8月からの日米貿易交渉だが大きな混乱はなかろう。
●消費増税も織り込み済み、米欧利下げと米中追加関税回避で、日本株は年末緩やかに上昇へ。
今回の参院選で与党は改選過半数を獲得も、改憲勢力は改憲発議に必要な3分の2に届かず
第25回参議院議員選挙(参院選)は7月21日に投開票が行われました。与党である自民党と公明党は71議席を獲得し、安倍首相が勝敗ラインに設定した53議席(与党が非改選議席とあわせて参議院で過半数に達するための議席数)を大きく上回りました。また、自民党の二階幹事長らが勝敗ラインとして掲げていた63議席(与党が今回改選となる124議席の過半数をおさえる議席数)も上回る結果となりました。
なお、今回の参院選では改憲が1つの争点でした。参議院で改憲発議に必要な3分の2に達するための議席数は164議席です。非改選の改憲勢力は79議席ですので(7月22日時点)、自公両党に、改憲に前向きな日本維新の会をあわせた議席数が85議席に達するかが注目されましたが、日本維新の会は10議席の獲得で、85議席には届きませんでした。
参院選の日本株への影響は限定的、注目は8月からの日米貿易交渉だが大きな混乱はなかろう
与党が改選過半数の63議席以上を確保したことは、政権安定の観点から、市場にとって好材料といえます。ただし、安倍政権続投は市場で想定されていたシナリオであり、現行の金融政策・財政政策の枠組みに変更はないと思われることから、参院選の結果を受けた日本株の上昇や円安の進行は限定的と考えます。今後、国内政治に関する市場の焦点は、日米貿易交渉と消費税率の引き上げに移るとみています。
日米貿易交渉について、8月に閣僚級協議が行われる見通しですが、自動車など工業品や農産品の関税の扱いでは、依然両国の立場に開きがあり、早期の大枠合意は難しい状況です。ただ、米国側は日本に対し中国ほど強い姿勢で臨むことはなく、また、日本側も2020年の大統領選挙を見据えるトランプ米大統領にある程度、花を持たせると思われます。そのため、日米貿易交渉で両国の緊張が高まり、日本株の下落や円高進行につながる恐れは小さいと考えています。
消費増税も織り込み済み、米欧利下げと米中追加関税回避で、日本株は年末緩やかに上昇へ
消費税率は10月に8%から10%へ引き上げられる予定ですが、こちらも市場では織り込みが進んでいるとみられます。過去、株価は消費税導入や税率引き上げという材料を無難に消化しており(図表1)、今回も税率引き上げによる株価への直接的な影響は限られると予想します。なお、安倍首相は7月21日、増税時の経済対策について、必要があればちゅうちょなく対応すると述べました。
弊社では、7-9月期の米国とユーロ圏の利下げで世界の金融環境は一段と緩和的になり、また、米国による対中制裁関税第4弾の発動は最終的に回避されると見込んでいます。このような外部環境のなか、国内企業の今年度下期の業績回復期待が高まり、株価は年末に向けて緩やかに上昇すると考えます。そのため、現時点で日経平均株価の年末着地水準については、22,500円程度との見方を維持しています。