米中首脳会談の評価と日本株への影響
2019年7月1日
●米中は協議再開で合意、米国は対中制裁関税第4弾を見送り、ファーウェイの制裁解除も示唆。
●ただ協議スケジュールの提示なく、合意の道筋は見えず、ファーウェイの完全な制裁解除も困難か。
●米強硬アプローチの修正で日本株の下値リスクは後退、ただ協議長期化で一定の警戒感は残る。
米中は協議再開で合意、米国は対中制裁関税第4弾を見送り、ファーウェイの制裁解除も示唆
米国のトランプ大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は6月29日、大阪で会談し、貿易協議の再開を決めました。また、トランプ米大統領は会談後の記者会見で、対中制裁関税第4弾(3,000億ドル分の中国製品に対する制裁関税)の発動を当面見送るとし、さらに、米企業が中国の情報通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に製品を売り続けても構わないと述べました。
米中協議が再開され、対中制裁関税第4弾の発動リスクがいったん後退したことは、市場にとって好材料であり、日本株にも追い風です。米国側からのファーウェイに対する制裁解除の示唆も、米中の緊張緩和を連想させるものです。そのため、週明け主要国の金融市場は、おおむね株高、債券安(利回りは上昇)で反応し、リスクオン(選好)の動きが強まると予想されます。
ただ協議スケジュールの提示なく、合意の道筋は見えず、ファーウェイの完全な制裁解除も困難か
ただ、米中首脳会談が開催される見通しとなった時点で、貿易協議の再開と協議期間中の対中制裁関税第4弾の見送りは、市場である程度、想定されていたシナリオだと思われます。また、2018年12月1日に開催された米中首脳会談と比べると、今回は具体的な協議のスケジュールなどは示されておらず(図表1)、合意に向けた道筋が見えにくい状況となっています。
ファーウェイへの制裁解除示唆はポジティブサプライズでしたが、トランプ米大統領は記者会見において、ファーウェイを禁輸措置のリストから外すとは明言していません。そして、米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は6月30日、ファーウェイは禁輸措置のリストに残り、厳しい輸出管理が適用されると述べました。これらを踏まえると、制裁が完全に解除される可能性は低いとみられます。
米強硬アプローチの修正で日本株の下値リスクは後退、ただ協議長期化で一定の警戒感は残る
結局、トランプ米大統領は今回の米中首脳会談を、大統領選挙に向けたアピールの場としたように思われます。例えば、①対中制裁関税第4弾の発動見送り→第4弾に猛反発する米企業への配慮、②ファーウェイに対する制裁解除の示唆→ファーウェイに製品を供給する企業への配慮、③中国が多くの農産物を米国から買うとの発言→米農家への配慮、と考えることができます。
トランプ米大統領は6月29日の記者会見で、交渉を急ぐつもりはないと発言していることから、関税カードをちらつかせて中国に早期合意を迫る強硬的なアプローチは、今後採用しないと思われます(図表2)。これは、日経平均株価の下値リスクの後退につながりますが、結果的に米中協議が長期化し、市場に一定の警戒感が残る恐れがあります。そのため、日経平均株価が22,000円台を回復した後、更にそこから一段高となるには、今しばらく時間を要すると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。