【No.647】英議会はメイ首相の離脱案を否決~今後の展開を整理する
2019年3月13日
●1月の否決を受け、離脱案を修正して採決に臨んだメイ首相だったが、議会で再度否決の結果に。
●コックス英法務長官がバックストップに依然リスクありとの見解を示し、強硬離脱派などが不支持へ。
●13日の合意なし離脱は否決、14日の離脱期限延期は可決を予想、延期は期間の長さに注目。
1月の否決を受け、離脱案を修正して採決に臨んだメイ首相だったが、議会で再度否決の結果に
英議会下院は3月12日、メイ首相が提示した欧州連合(EU)からの離脱案を採決し、賛成242票、反対391票で否決しました。もともとメイ首相の離脱案は、1月15日に賛成202票、反対432票で否決されていましたが、メイ首相はその後、アイルランド国境問題の「安全策(バックストップ)」が一時的であることを法的に保証するよう、EUと交渉を行っていました。
なお、バックストップとは、英領北アイルランドとEU加盟のアイルランドとの国境管理に関し、2019年3月末から2020年末までの移行期間中に具体策がまとまらなかった場合、移行期間を最大2年延長するか、あるいは、英国全土をEU同盟に残すか、北アイルランドのみ食品などの規制でEUルールを適用するかを英国とEUで決めるというものです。保守党内の強硬離脱派などは、EUに縛られるとして、バックストップに反対しています。
コックス英法務長官がバックストップに依然リスクありとの見解を示し、強硬離脱派などが不支持へ
こうしたなか、EUは3月11日、英国に譲歩する姿勢を示し、EUが英国を無期限に安全策に拘束しないことなどを確認する共同文書を追加することで英国と合意しました。これを受け、コックス英法務長官は3月12日の議会採決前、今回の合意で英国がバックストップに縛られるリスクは軽減すると述べた一方、英国がバックストップ解消の合法的な手段を持つことにはならず、依然リスクが残るとの見解を示しました。
強硬離脱派などは、バックストップに期限を設けることや、英国が一方的にバックストップから抜け出せるようにすることを主張していましたが、コックス英法務長官の見解を踏まえ、今回もメイ首相の離脱案は支持しないという判断に至ったと推測されます。英議会下院は今後、3月13日に「合意なし」の離脱の採決を行い、否決の場合は3月14日に離脱期限延期の採決を行うことになります(図表1)。
13日の合意なし離脱は否決、14日の離脱期限延期は可決を予想、延期は期間の長さに注目
3月12日の為替市場に目を向けると、メイ首相が示した離脱案が否決される前、コックス英法務長官の見解が伝わった時点で、すでに英ポンドは対米ドルで下落していました(図表2)。しかしながら、同日の米国株は総じて落ち着いており、離脱案否決の影響は限定的だったように思われます。なお、市場は現時点で、13日の合意なしの離脱は否決、14日の離脱期限延期は可決、を織り込んでいるとみられます。
実際に、13日の合意なしの離脱については否決される可能性が高く、14日の離脱期限延期は可決される流れになることが予想されます。延期となった場合は、その期間が焦点となります。EUは欧州議会選挙(5月23日~26日)までを離脱期限としていますが、この程度の短い期間では、問題解決は困難です。ただ、EU側が長期の延期を準備しているという報道もあり、目先は延期期間の長さに市場の注目が集まっています。