【No.611】日米株価急落のなかで冷静にみておきたいポイント
2018年12月25日
●米政府機関閉鎖の長期化や金融市場の安定性に対する投資家の懸念から、米株は大幅続落。
●ただ今回の政府機関閉鎖の影響は軽微で金融機関は潤沢な流動性を保有、株安は行き過ぎ。
●日経平均も下げたがPBRの1倍は約19,390円、一時的に割り込んでもここが1つの下値目安に。
米政府機関閉鎖の長期化や金融市場の安定性に対する投資家の懸念から、米株は大幅続落
12月24日の米国株式市場で、ダウ工業株30種平均は前週末比653ドル17セント(2.9%)安の21,792ドル20セントで取引を終えました。また、S&P500種株価指数も同65.52ポイント(2.7%)安で引け、9月高値からの下落率が20%に達したことで、「弱気相場」入りとなりました(図表1)。背景には、米政府機関閉鎖の長期化や金融市場の安定性に対する投資家の懸念があると思われます。
マルバニー米行政管理予算局長は12月23日、米政府機関の一部閉鎖が年明けまで続く可能性に言及しました。また、ムニューシン米財務長官は同日、大手金融機関と電話協議し、潤沢な資金供給を続けることを確認したとのコメントを発表し、24日には米連邦準備制度理事会(FRB)などの金融当局者と電話会合を開催しました。しかしながら、これが逆に投資家の警戒感を強めてしまったと推測されます。
ただ今回の政府機関閉鎖の影響は軽微で金融機関は潤沢な流動性を保有、株安は行き過ぎ
なお、米国において2019会計年度の予算は約65%が成立済みで、国防総省など重要省庁は十分な予算を確保しています。そのため、仮に閉鎖が1週間続いても、GDPへの影響は年率換算でマイナス0.025%からマイナス0.05%程度と試算され、米国経済への影響は軽微と考えられます。したがって、米政府機関閉鎖の長期化を懸念した株安は、やはり行き過ぎと思われます。
また、米民間金融機関がFRBに預け入れる準備預金のうち、法律で定められている以上の残高、すなわち超過準備預金残高は、直近で約1.6兆ドルにのぼります(図表2)。そのため、ムニューシン米財務長官がわざわざ資金供給に言及しなくても、すでに米民間金融機関は潤沢な余剰資金を保有していることになります。したがって、金融市場の安定性を懸念した株安もまた、行き過ぎと考えられます。
日経平均も下げたがPBRの1倍は約19,390円、一時的に割り込んでもここが1つの下値目安に
米株安の流れを受けて、12月25日の日経平均株価は節目の20,000円を割り込んで大きく下落しました。米国や日本など主要国の株価指数は、世界的な景気悪化のシナリオを急速に織り込んだと思われます。ただ、日本株については、12月20日付レポート「日本株低迷の理由は極端な需給の歪みか」で触れた通り、海外勢による巨額の先物売りや現物売りで需給が大きく歪んでおり、これも株価の重しになっています。
現時点で注目しておきたいのは、日経平均株価の株価純資産倍率(PBR)です。12月21日時点のPBRは前期の純資産基準で1.04倍でした。PBRの1倍割れは株価が純資産の価値を下回ることを意味します。現時点で日経平均株価のPBRが1倍となる水準は約19,390円です。一時的に1倍を割り込む株安も想定されますが、この辺りが1つの下値の目安になるのではないかとみています。