【No.574】米株急落が日本株に与える影響について
2018年10月11日
●先週の日本株の下げは米金利上昇に起因し、11日の下げは米株安そのものに起因すると考える。
●今回の米株安は決算前のポジション調整との見方もあり、その場合調整一巡後で米株は反発へ。
●日本株は米長期金利の一服と米株のポジション整理が一巡すれば、徐々に落ち着きを取り戻そう。
先週の日本株の下げは米金利上昇に起因し、11日の下げは米株安そのものに起因すると考える
10月10日の米国株式市場では、主要株価指数が大幅安となりました。ダウ工業株30種平均は、前日から831ドル83セント下落し(前日比-3.1%)、25,598ドル74セントで取引を終えました。また、S&P500種株価指数は前日比3.3%安の2,785.68ポイントで、ナスダック総合指数は同4.1%安の7,422.05ポイントで、それぞれ取引を終えました。これを受けて、リスク回避の動きが強まり、為替市場では円が対主要通貨で上昇しました。
米株の急落と円高の進行を背景に、10月11日の東京株式市場では、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など、主要株価指数がそろって下落しました。ただ、先週の日本株の下落と11日の日本株の下落は、原因が異なるように思われます。つまり、先週の下げは米金利上昇に起因し、11日の下げは米株安そのものに起因すると考えています。実際、10日の米10年国債利回りは、前日比約4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下しています。
今回の米株安は決算前のポジション調整との見方もあり、その場合調整一巡後で米株は反発へ
さて、10日の米株急落ですが、市場では、米国の企業決算や中間選挙を控え、ポジション調整の売りが膨らんだのではないかとの声も聞かれます。基本的に米景気を悲観した投げ売りでなければ、調整一巡後は株価の反発も期待されます。確かに、先週からの米10年国債利回りの上昇でイールドスプレッドが低下し(図表1)、株価の割高感が強まっていたため、足元は調整売りの出やすい地合いといえます。
以上より、10月に入ってからの日本株は、①米長期金利の上昇、②米企業決算などを控えた米株の調整売り、によって下げ足を速めたと推測されます。ただ、米長期金利の上昇は、米景気の強さを反映したものである限り、株価を持続的に押し下げる要因にはなりません。また、米企業決算などのイベントを控えたポジション調整であれば、短期間で収束するため、これも株価を持続的に押し下げるものではありません。
日本株は米長期金利の一服と米株のポジション整理が一巡すれば、徐々に落ち着きを取り戻そう
日経平均株価は、終値ベースで9月14日に23,000円台を回復した後、わずか6営業日後の9月26日に24,000円台を回復しました。その後、終値ベースで10月2日に24,270円62銭の年初来高値をつけると、同じく6営業日後の10月11日に23,000円を割り込みました。日本株はかなり荒い値動きとなっていますが、前述の通り、10月に日本株を押し下げたと推測される米長期金利上昇と決算前の調整売りは、一過性の株安要因とみています。
日本株はしばらく落ち着きどころを探る展開が予想されますが、米長期金利の一服と、米株のポジション整理が一巡すれば、落ち着きを取り戻すと考えています。なお、市場の関心はこの先、改めて日米の企業決算に向かうことが予想されます。S&P500種株価指数を構成する企業500社の1株あたり利益について、市場では今年、来年とも前年比で2ケタの増益が見込まれています(図表2)。日米の主要株価指数は、いずれも決算本格化前に水準が切り下がったため、好業績銘柄はむしろ買われやすくなったと思われます。