【No.503】日経平均株価が織り込む業績予想
2018年5月14日
●企業決算は一部で懸念されたほど悪い内容ではないものの、総じてみればやはり控えめな印象に。
●ここ1カ月の日経平均株価の上昇は円安進行による業績上振れ期待を反映したものと思われる。
●今後はドル円相場に注目、一段のドル高・円安進行なら、PER主導で株価を押し上げる展開に。
企業決算は一部で懸念されたほど悪い内容ではないものの、総じてみればやはり控えめな印象に
日本では5月11日に3月決算企業の決算発表のピークを迎えました。今期の業績予想は、一部で懸念されたほど悪くはありませんでしたが、総じてみれば、やはり控えめな印象を受けます。輸出企業の中には、ドル円の想定為替レートを1ドル=105円に設定するところも多く、これが予想利益を減少させる一因となっているように思われます。また、前期は米減税による増益効果が大きく、今期はその反動が出ます。
企業が示した今期の業績予想は、いわゆる「ガイダンスリスク(弱気の業績予想が相次ぎ株価が大きく調整するリスク)」を顕在化させるほど、弱いものではありませんでした。ただその一方で、市場を強気にさせるほどの内容でもありません。結局のところ、増益予想銘柄が買われ、減益予想銘柄が売られるという、個別物色の動きが続いており、相場上昇の勢いは限定されています。
ここ1カ月の日経平均株価の上昇は円安進行による業績上振れ期待を反映したものと思われる
ここで、日経平均株価の水準について、予想利益に基づくEPS(1株当たり利益)とPER(株価収益率)に分けて考えます。決算発表が本格化する前の4月10日時点において、日経平均株価ベースのEPSは約1,700円、PERは12.82倍でした(図表1)。その後、決算発表が始まると、EPSは5月11日時点で約1,676円に低下しました。これは、利益の伸びが前期から一服するという企業の業績予想を、素直に反映したものと考えられます。
一方、PERは13.58倍に上昇しています。これは、足元のドル円レートが1ドル=105円の想定レートよりも円安で推移しているため、将来、業績予想は上方修正されるという市場の期待を反映したものと考えられます。したがって、4月10日から5月11日にかけての日経平均株価の上昇は、円安進行による市場の「業績上振れ期待」を反映したものと思われます(図表2)。
今後はドル円相場に注目、一段のドル高・円安進行なら、PER主導で株価を押し上げる展開に
3月決算企業が、実際に業績予想を上方修正する場合、次は4-6月期の決算発表時、すなわち7月下旬から8月上旬に公表することになります。したがって、それまでの間、EPSの上昇が主導する形で日経平均株価を押し上げる展開は見込み難いと思われます。そのため、夏場にかけて株価上昇のカギを握るのがドル円相場です。ドル高・円安が一段と進行すれば、市場の「業績上振れ期待」が更に高まります。
最近のドル円は、110円20銭付近に位置する200日移動平均線をドルの上値抵抗線として意識している様子がうかがえます。今後、米中貿易摩擦および朝鮮半島を巡る緊張が緩和し、米長期金利の緩やかな上昇が継続すれば、ドル円がこの抵抗線を上抜けて、ドル高・円安方向に進む可能性は高まると考えます。その場合、「業績上振れ期待」を背景にPERが上昇し、日経平均を23,000円台に押し上げる公算は大きくなります。