米税制改革法案とFRB人事~ここまでの進捗と今後の焦点
2017年12月7日
●減税効果がほぼ織り込まれ、税制改革法案の成立が若干遅れても市場や経済への影響は軽微。
●FRB人事ではグッドフレンド氏が理事に指名され、バーキン氏がリッチモンド連銀総裁に選出された。
●今後、市場への影響はFRB人事の方が大きいと思われ、12月のFOMCではドットチャートに注目。
減税効果がほぼ織り込まれ、税制改革法案の成立が若干遅れても市場や経済への影響は軽微
米下院本会議は11月16日、米上院本会議は12月2日、それぞれの税制改革法案を可決しました。今後は、①両院協議会で法案を一本化、②一本化された法案を再び上院、下院で採決、③両院で可決された法案をトランプ米大統領が署名して成立、という流れになります。なお、下院の会期末は12月14日、上院は12月15日ですので、共和党指導部は12月8日期限の暫定予算を2週間延長し、年内の法案成立を目指す模様です。
現時点で、税制改革法案の年内成立の可能性は、かなり高まったと思われます。なお、下院案と上院案のGDP押し上げ効果は、0.3%~0.4%程度と試算されます(図表1)。最終的に一本化された法案の内容を確認する必要はありますが、市場でもこの程度の押し上げ効果は織り込んでいるとみられます。そのため、法案の成立時期が若干遅れたとしても、金融市場や米国経済への影響は限定的と考えられます。
FRB人事ではグッドフレンド氏が理事に指名され、バーキン氏がリッチモンド連銀総裁に選出された
一方、米連邦準備制度理事会(FRB)の人事にも動きがありました。FRBの理事ポストは3つ空席が続いていましたが、トランプ米大統領は11月29日、FRBの理事に経済学者でカーネギーメロン大学教授のマービン・グッドフレンド氏を指名しました。今後は上院の承認を待つことになります。なお、同氏を引き締め志向が強いタカ派的と評する声もありますが、正確な見極めは今後の発言を待つことになると思います。
なお、リッチモンド地区連銀では、ラッカー総裁(当時)が4月に辞任して以降、マーク・マリニックス第1副総裁が総裁代行を務めていました。同地区連銀の理事会は12月4日、次期総裁にコンサルタント会社マッキンゼーの上級幹部、トーマス・バーキン氏を選出したと発表しました。同氏がFRBの承認を経て総裁に就任すれば、2018年に米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つことになります。
今後、市場への影響はFRB人事の方が大きいと思われ、12月のFOMCではドットチャートに注目
パウエル理事は、間もなく米上院本会議で次期FRB議長に承認される見通しですが、その場合、2018年のFOMCで投票権を持つメンバーは、図表2の通りになります。依然、主要ポストに空席が目立ち、新メンバーの金融政策スタンス次第では、米長期金利や米ドル相場が大きく変動する可能性があります。そのため、成立がみえてきた米税制改革法案よりも、FRB人事の方が、今後の金融市場に与える影響は大きいと思われます。
目先は、12月12日、13日のFOMCに注意が必要です。追加利上げはほぼ織り込み済みですので、今回はFOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布図(ドットチャート)に市場の関心が集まっています。前回9月に公表されたドットチャートで中央値が示唆する利上げ回数は、2018年が3回、2019年が2.3回、2020年が0.7回でした。今回これらに変化がみられれば、米長期金利や米ドル相場が敏感に反応すると思われます。