衆議院総選挙~シナリオ別に考える相場の反応
2017年10月4日
●民進党分断で選挙は3極の争いへ、与党はさほど議席を失わないのではとの見方が市場に浮上。
●希望の党は憲法改正などで与党と変わらない立場、一方、批判票の受け皿分散は与党有利に。
●市場の関心は政策内容や政局の安定性、選挙後の相場を展望する上でこれらの見極めが必要。
民進党分断で選挙は3極の争いへ、与党はさほど議席を失わないのではとの見方が市場に浮上
民進党の枝野代表代行は10月2日、新党「立憲民主党」の立ち上げを表明しました。これにより、民進党議員は、小池新党、立憲民主党、無所属、いずれかで出馬することになります。結局、小池東京都知事の新党「希望の党」の登場により、民進党が分断された格好になりました。そして、衆議院総選挙は、①「自民・公明」、②「希望・維新」、③「立憲民主・共産・社民」の3極で争うことになります。
これら一連の流れを受け、市場では、希望の党はあまり議席を獲得できず、与党もそれほど議席を失うことはないのではないか、との見方が浮上しています。仮にそのような結果となれば、アベノミクスの枠組みは変わらず、緩和的な金融政策と景気刺激的な財政政策が、しばらく続くことになります。10月3日の東京市場では、株高・円安が進みましたが、このような選挙に絡む思惑が、一部影響した可能性があります。
希望の党は憲法改正などで与党と変わらない立場、一方、批判票の受け皿分散は与党有利に
希望の党は10月3日、衆議院選挙の第1次公認候補192人(小選挙区候補191人、比例代表候補1人)を発表しましたが、民進党からの合流組が約110人含まれています。このように、①最終的な公認候補の多くが民進党出身者となる可能性があること、また、②憲法改正や安全保障関連法案についての立場は与党とあまり変わらないことが、希望の党の躍進を妨げる要因とみる向きもあります。
また、野党の勢力結集が不発に終わり、衆議院総選挙が3極の争いになったことで、政権批判票の受け皿が分散し、与党には追い風になったという声も聞かれます。もちろん、選挙情勢は今後も大きく変わる可能性があり、予断を許しません。それを踏まえた上で、想定され得る選挙結果をいくつかのシナリオに分け、相場がどのように反応するかを考えてみます(図表1)。
市場の関心は政策内容や政局の安定性、選挙後の相場を展望する上でこれらの見極めが必要
まず、①与党が「3分の2」の310議席を確保した場合、アベノミクスの枠組みは変わらず、政権は長期安定との見方から、株高・円安の材料になると思われます。次に、②与党が「絶対安定多数」の261議席や、「安定多数」の244議席まで議席数を減らした場合、自民党の議席数が焦点になります。政権安定への懸念が強まれば、相場は株安・円高に振れやすくなります。
そして、③与党の議席が「過半数」の233議席を失った場合、野党も過半数未達なら、連立を模索する展開となり、野党が過半数をとれば、ねじれ国会(参議院は自民・公明が多数党)となります。いずれも不透明感が強く、相場は最も株安・円高に傾くと思われます。一般に、市場の関心は、政策内容や政局の安定性にあるため、選挙後はこれらの見極めが必要です。目先は、希望の党と立憲民主党が、どのような政策方針を示すかに注目が集まります。仮に、成長重視など市場の期待が高まる内容となり、かつ、野党勝利でも安定した政策運営を見通すことが出来れば、株安・円高は一時的となる可能性があります。