ホームマーケット日々のマーケットレポート投資テーマから考えるポートフォリオ戦略 タイミングが分からないときにも『積立投資』で資産形成 不測の株価上昇局面をしっかり捉える秘訣

タイミングが分からないときにも

『積立投資』で資産形成

不測の株価上昇局面をしっかり捉える秘訣

2022年12月20日

1.FRBは利上げペースの減速を決定、軟調な株式市場の底入れはいつ?

2.”上昇局面を捉えられない”リスクとは?

3.投資機会を逃さない『積立投資』が株価下落局面で発揮する効果とは?

2022年も年末を迎えようとしています。今年を振り返ると、世界的にインフレに左右された年となりました。インフレ抑制のため、多くの主要先進国ではこれまでにない大幅かつ急ピッチでの利上げが進められてきましたが、ここにきて徐々に「ターミナルレート」と言われる政策金利の最終到達点が見えてきました。


足もとでは、金融引き締めの影響から経済指標は弱含み、株式市場は軟調な展開となっているものの、米連邦準備制度理事会(FRB)は12月から利上げ幅をそれまでの0.75%から0.50%へ縮小し、来年前半には利上げも一服すると見られています。そんな中、今後訪れるであろう株価の上昇局面を逃さないためにはどうすればよいのでしょうか?


1.FRBは利上げペースの減速を決定、軟調な株式市場の底入れはいつ?

■2022年3月に始まった米国の大幅かつ急ピッチな利上げや原油価格などの下落により、ようやく足もとでは消費者物価指数(CPI)の上昇にもピークアウトが見られてきました。12月には、FRBは利上げ幅をこれまでの0.75%から0.50%へと縮小し、利上げペースの減速を決定しました。市場では2023年前半にも利上げは停止され、FRBは様子見姿勢に転じるとの見方が大勢です。


■実体経済はこれから利上げの影響が本格化して景気が悪化すると見られる一方、金融市場では今後の金融緩和を織り込んで、徐々に堅調に推移するとの見方も出てきています。ただ、株価の上昇・下落のタイミングを見極めることは難しく、投資に尻込みしてしまう投資家も多いと思われます。そこで、資産運用の鉄則の1つの「相場にはできるだけ長く居続けることが大事」を思い出したいと思います。

2.”上昇局面を捉えられない”リスクとは?

■これまで株価は上昇や下落を繰り返してきましたが、長期的には上昇してきました。しばらく、株価は不安定な状況が続く可能性がありますが、今後の株価が上昇するであろう局面に備えていくと、株価上昇に伴う差益を期待することができそうです。


■この「株価の上昇局面をしっかりと捉えること」こそ、運用パフォーマンスを上げることに大きな違いを生むと考えられます。下のグラフは、日本株(東証株価指数、TOPIX)と米国株(S&P500種株価指数、S&P500)の長期の推移を月次で見たものです。そして、月間での上昇率が高い上位10カ月を赤いマーカーで示し、この10カ月の上昇月を捉えられなかったとして運用を継続した試算が青いラインです。


■日本株を示した左側のグラフでは、直近(2022年11月末)のTOPIXは3,148.52ポイントでしたが、過去10年間で月間上昇率の上位10カ月を除くと1,305.30ポイントという試算結果となりました。同様に、米国株を示した右側のグラフでは、直近(同上)のS&P500は8,678.00ポイントでしたが、月間上昇率の上位10カ月を除くと3,824.04ポイントとなりました。すなわち、株価の上昇率が大きな10カ月の“上昇局面を捉えられず”に「相場に居なかった」ならば、そのパフォーマンスには大きな違いが生まれたと考えられます。

3.投資機会を逃さない『積立投資』が株価下落局面で発揮する効果とは?

■しかし、こうした株価の上昇局面をピンポイントで当てる事は至難の業です。特に、株価が不安定な局面では、投資家の多くが買い控えている状況と言え、その中で買い攻勢に向かうことは難しいかもしれません。むしろ買い場を狙わずに、「相場に居続ける」ことで、投資機会をできる限り逃さないことが重要と言えます。そこで、有効な投資手法の1つが『積立投資』です。


■『積立投資』では、「ドル・コスト平均法」と言われる、価格が変動する商品に対して毎月など定期的に、決まった金額を買い続ける投資手法を用います。例えば、以下のシミュレーションでは、投資信託を例に、毎月3万円ずつ買い続けるケースを想定しました。投資信託の基準価額は1万口あたり10,000円とします。


■基準価額が10,000円の時に3万円投資すると、3万口を購入できます。一方、基準価額が下落した5,000円や8,000円の時には同じ3万円の投資でも6万口や3.75万口と、口数を多く購入することができます。すると、価格が上昇した場合に、多く購入できた口数分の上昇差益を期待することができます。また、1万口あたりの平均投資額を見ても、価格が下落した局面で購入することができれば、平均投資額を引き下げることができ、その後に価格が上昇すれば、上昇差益を期待することができます。


■このように『積立投資』では、価格が下落した局面でこそ、購入口数を増やすことができたり、平均投資額を下げることが可能となります。もちろん、その後に価格が下落する一方で価格上昇が期待できない場合には注意が必要ですが、そうではない場合、長期的な投資を視野に入れることで今後の上昇局面に備えることが可能となります。

<まとめ>

■相場の不透明感が強い時には、相場見通しに確信が持てず、投資を始めることに尻込みしがちかと思われます。しかし、相場を長期で見れば上昇と下落を繰り返してきており、「上昇局面を捉えられない」リスクはその後の投資パフォーマンスに大きな影響を与えると考えられ、相場が軟調な時ほど、その後の上昇局面に備えることのできる時期ともいえそうです。そうした中で『積立投資』は、相場に居続けることで投資機会を逃さずに、かつ相場が軟調な局面では平均投資額を下げながらも多く購入して、相場の上昇局面に備えていける有効な投資手段の1つと考えられます。

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