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配当収入に着目した投資
今後の投資環境にマッチする投資対象としてのリート

2022年6月15日

1.今後の投資環境は「楽勝」ではない

2.やや先を見越した時、有望な投資対象は実はリートも

3.S&P500とリートを合わせて投資する場合の持ち方は?

高インフレと金融引き締め、ウクライナ情勢、中国のコロナ感染拡大と景気減速、の三つの悪材料により、金融市場は今年に入って調整しています。先行きも、これまでのような高成長や、緩和的な金融政策など、市場環境の大幅な改善は見通し難い状況です。近年、S&P500種指数等に連動するインデックス投信の積立投資などによる資産形成を始めた投資家が多いようですが、このままでいいか、悩む声をよく耳にします。積立投資で時間分散を図りつつ、年齢的に長期の投資期間を想定している場合、運用で取っているリスクを下げる必要性は低いとお考えの方も多いと思われます。以下では、そういう場合の投資対象を検討してみます。

   


1.今後の投資環境は「楽勝」ではない

■世界的に、高いインフレ下、金融引き締めによって景気は徐々に減速していくと見込まれます。ただ、新型コロナの感染抑制策等からのサービス業を中心とした回復の過程でもあります。このため、景気は過度には落ち込まない可能性が高いと見込んでいます。


■例えば、世界経済は、昨年の6.1%成長の後、今年は3.2%、来年は3.4%に鈍化していくと弊社では見込んでいます。世界の潜在成長率は3%をやや上回る水準と考えられますので、今後の経済成長はほぼ潜在成長率に沿ったものとなる見込みです。

インフレは徐々に低下も、大きくは下がらない

■一方、インフレ率は、来年は今よりは下がるものの、コロナ前のような1%台の低インフレには戻らないと見られます。弊社の予想では、米国が年間平均で今年が4.5%に対し、来年が3.0%、ユーロ圏は今年が6.8%に対し、来年が2.8%です。原油価格や食品価格は今後も高めの水準で推移する可能性がありますが、前年との比較では伸び率が鈍化すると見られます。


■ただ、脱炭素、米中・米ロ対立によるグローバライゼーションの後退、サプライチェーンの非効率化等、企業活動のコストは高まる可能性があります。今後、インフレが落ち着くとしても、これまでのような超金融緩和状態には戻らないと考える必要がありそうです。以上から今後の投資環境は以前のように「楽勝」ではないと言えそうです。

   


2.やや先を見越した時、有望な投資対象は実はリートも

■これまでは、経済成長が期待できるか、あるいは、成長率が低い時は金融緩和が期待できる期間が続いていました。このため、金融市場参加者の間では、そういった恵まれた相場環境を背景に、金融市場は上昇すると言った、楽観的な見通しを耳にすることが多かったと言えます。今後は、少なくとも当面の間はそういった状況にはならないと考え、これを前提として有望な投資対象を検討します。

 


投資のリターンは価格変化+インカム収入

■まず、金融資産への投資リターンが何から来ているのか、改めて確認します。それは、価格変化とインカム収入です。価格上昇によるリターンが実現するには、経済や企業利益の成長が高まるか金利が低下する必要があります。例えば、株式の場合、企業の利益成長が高まる時、あるいは金融緩和で株価評価(バリュエーション)が高まる時に、株価が上昇する傾向があります。金利水準が低い中、利益成長期待が高まれば、成長期待と低金利によるバリュエーション上昇が合わさって株式市場が大きく上昇することがあります。逆に、企業業績が減少する時や、金利が上昇する時には、株式投資からのリターンは低調なものになる傾向があります。


■さて、前述の経済シナリオを想定すると、成長はほぼ潜在成長率並み、インフレは主要中央銀行の目標を上回り続けるため、金融政策はやや引き締め気味となることが見込まれます。こう考えると、相場環境はそれ程良好とは言い難く、投資家は比較的慎重な姿勢を取ることが見込まれます。

リートは配当利回りが高く、インカム収入狙いの投資魅力度が高い

■以下に主要資産の特徴と今後の見通しをまとめました。当面の間は、価格上昇よりも安定的なインカム収入に着目した投資に分がありそうです。この点では、配当利回りが高いリートが投資対象として浮かび上がります。


■リートの配当利回りが高いのは、収益の大半を配当として分配するというリートの持つ制度がサポートとなっています。リートの収入である不動産賃料は景気やインフレに連動するケースが多いため、経済成長率が高くなく、インフレがやや高めで推移するとの見通しを踏まえると、引き続き高い配当利回りを見込むことが出来そうです。

リートの投資リターンの過半は配当から

■念の為、リートへの投資から得られたリターンの内訳を確認します。1990年に遡り、グローバルリートに投資した場合の価格と配当から得られるトータルリターンの累計を分析し、トータルリターンに占める、配当から得られるインカムリターンの割合いを計算しました。それによると、22年5月末時点でインカムリターンの割合いは65%となっています。


■つまり、リートへの投資リターンの過半は配当から来ている事が分かります。また、過去のリターンの推移を見ると、トータルリターンは価格変動の影響を受けて大きく上下する時期もありますが、インカムリターンの累計は緩やかに上昇しており、経済環境などの変化の影響を受けにくいことも分かります。


■なお、グローバルリートの配当利回りと、世界国債指数の利回りを比較すると、グローバルリートの利回りの方が高く推移してきたことが分かります。足元で、インフレの上昇や金融引き締めの流れを受けて国債利回りが上昇していますが、穏やかながら高めのインフレが定着すれば、リートの収入である不動産収入が連動して増加することが期待され、リートの配当も高まる可能性があります。

3.S&P500とリートを合わせて投資する場合の持ち方は?

■最後に、米国株式とリートを合わせて持った時の、投資効率についてみてみます。以下では、S&P500とグローバルリートを合わせて持った場合の投資効率を、配分比率を2.5%刻みで動かして分析しました。


■S&P500の期待リターンは8.2%、リスク(標準偏差)は19.7%、グローバルリートの期待リターンは8.2%、リスクは20.4%と想定します。期待リターンとリスクは弊社の予想値です。また、両指数の相関係数は0.75です。これは、過去データに基づき求めました。


■分析によると、期待リターンとリスクを割った投資効率は、S&P500を57.5%、リートを42.5%で持った場合に最高となることが分かりました。

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